《第26話(最終話)》「10キロ痩せた女の末路」

2キロ太った。

……。

いやいやいや、最終話だよ?
最終話ののっけから、何をタイトルと真逆なことを言ってるんだ。大丈夫か? とお思いかもしれない。
でも、間違いなく、

2キロ太った。

ひとまず何が起こったのかを説明するために、昨日に時間をさかのぼらせてほしい。
というわけで、

昨日――……。

 

日曜日の朝。
爽やかな鳥のさえずりと共に、私は目を覚ました。
そして、この爽やかな、いい感じの空気の中、

「たぶん今日だ……」

直感的に、そう思った。

3、4日前に
10キロ痩せるまで、あと0.6キロ──
と言うところまで来ていた私は、
今日が「10キロ痩せた!」と言えるその日だ、と直感的に思ったのだ。

ベッドから急ぎ起き上がり、洗面所に向かい、いつも通りトイレに行き、
その後、約1年間ほぼ毎日毎朝見続けた、もはや相棒とも言える体重計に乗った。

“ピッ”

私が乗ると、これまた1年間聴き続けたいつもの音を鳴らす体重計。
いよいよ、いよいよその瞬間が訪れ……

10キロ痩せるまで、あと0.1キロ──

 

いやいやいや、これはないこれはないこれはない。

あと100グラムて!
もう誤差じゃんこんなの!

いやこれ、もう一回体重計乗ったらいけるんじゃない?
もう一回体重計のったら、

“ピッ”

10キロ痩せるまで、あと0.1キロ──

ちくしょう!
あ、ちょっとつま先立ちとかでなんとか……

“ピッ”

10キロ痩せるまで、あと0.2キロ──

 

なんでだよ!!

あ、トイレに! さっきも行ったけど、もう一回トイレに!!
……出ない!!
そりゃそうだ。さっき行ったばっかりだもん。

えー!! でもこれ……なんかやばい気もする……。

今までの経験から、明日体重が微増してる可能性があることは容易に想像がつく。
そうなったら次いつ最小値の更新が出来るかわからない。
しかもここでもしまた停滞なんてしたら……もはや発狂モノだ。

最後の最後でなぜこんなことに……、いや、違うな。
最後の最後までなぜこんなことに!!

もうこうなったら、今日一日飲まず食わずで生活するのはどうだろう!?

いやいやいや、きついきついきつい!
せっかくの日曜日にそんな修行みたいな生活はしたくない。
別に特別予定があるわけでもないけど、それでもいや。

と、その時もっちゃんからラインが来た。

 

こんな時に限って!!
行きたいよ! そりゃ私だって行きたいけれども!!

 

なるほど。それは是非ともご一緒したいところ。
いやー……でもなー……!!