栄養ドリンクに病気を治す力はない
私が処方する薬について、細かく効能を聞いてくる患者さんもいます。
医者が薬を出すのは、その病気を治すためですが「これ、飲まなきゃいけないの?」と言ってくる人ほど、サプリメントをいっぱい飲んでいたりします。
どうして飲んでいるのかを聞いてみると「これ、身体にいいってテレビで言っていたから」と答えるのですが、私のように30年間、がん医療の最前線にいる医者が考えて処方する薬よりも、サプリメントが身体にいいなんてことは考えづらいでしょう。
トクホのお茶を愛飲している人が、それだけで痩せると思っていたと聞いてビックリしたことがあります。
トクホが売れるのは、日本の経済が活性化するという意味では、非常にいいことだと思いますが……トクホやサプリメントは、あくまで心の栄養と捉えましょう。それらのおかげで劇的に血圧が下がったり、痩せたりはしません。
そういう意味では、いわゆる「栄養ドリンク」や「エナジー飲料」も、飲んだから元気になるというものではないようです。中にはカフェインやアルコールが含まれている飲料もあって、それで一瞬、元気になったような気になるものもあります。
また、同じブランドでも価格の安いものから高いものまでありますが、値段が高いから効くというわけでもないようです。
2000年にアメリカの『TIME』という雑誌の記者が日本に来て、栄養ドリンクの取材をしています。その中で、朝にサラリーマンが栄養ドリンクを選ぶ基準を取材したら、単純に「その日の財布の中身」で買うものを決めていたそうです。
なんだか興味深い話ですよね。実際、栄養ドリンクに入っている成分はさまざまで、本当に効果があるかどうかの判断は難しいものばかり。ですから、栄養ドリンクも、健康食品やサプリメントの一種だと考えてください。
決して薬ではないので、病気を治す力はありません。