宇宙は無限のインスピレーションを与え続けてくれる

数百年前には、
人々は地球が唯一の存在であり、
宇宙の中心に位置すると考えていました。
今や、私たちは銀河に
数千億の星々が存在し、
その銀河も数千億存在し、
その星々の多くが惑星系を
持っていることを知っています。


『ホーキング、宇宙と人間を語る』より

たった数百年前の人々は、地球が宇宙の中心だと考えていたわけです。でも、当時の人々を我々は笑うことはできません。当時の観測技術や科学的定説において考えると、それが最も理解しやすく、受け入れやすい根拠のある見方だったのでしょう。

それを思うと、科学の進歩とは有難いものです。もしかしたら、これから数百年後の未来の人々は、現代の常識や定説を振り返ったときに、同じような気持ちになるのかもしれないからです。

いつの時代においても、その時代に生きる人々が支持する常識や定説が存在します。それはそれで、その時代を形成する指針であり、とても大事なものだと思います。しかし、それだけにとらわれたままでいたら、きっと文明は進歩のスピードを緩め、最後には停滞して滅んでしまうかもしれません。

幸運なことに、いつの時代においても、常識や定説にとらわれず、その先にある新しい発見や価値観を追い求める人たちがいます。彼らはその当時、常識だったことに対して新たな仮説を投げ掛けます。やがて、それが証明されると、それは新たな定説となり代わります。そのとき、人々は視野を広げることができ、新たな価値観を享受するようになります。

これは、まるで部屋の古臭い壁紙を剥がし、新しい色と模様の美しい壁紙に張り替えるようなことかもしれません。

▲宇宙は無限のインスピレーションを与え続けてくれる イメージ:PIXTA

新しい知見は常に存在し、求めさえすれば我々が探し出すのを待ち構えているように思います。宇宙は発見の宝庫です。この無限とも言える宇宙に、いったいどんな新しい発見が待ち受けているのでしょうか。

人類が宇宙への興味を持ち続け、宇宙への歩みを止めない限り、宇宙はこれからもエキサイティングな発見の場であり続け、我々に無限のインスピレーションを与え続けてくれるはずです。

※本記事は、若田光一:著『宇宙飛行士、「ホーキング博士の宇宙」を旅する』(日本実業出版社:刊)より、一部を抜粋編集したものです。