2019年に惜しまれつつ逝った車椅子の天才宇宙物理学者・ホーキング博士の名言を若田光一さんが読み解き、ホーキング博士の「脳内宇宙」を旅した記録。知的生命体の存在には懐疑的だったホーキング博士とは対照的に、若田さんは期待をかけたいという。これからも、宇宙はエキサイティングな発見の場であり続けるはずなのです。

どうやって生き延びてきたのだろう?

ホーキング博士は「地球外に高度な文明を築いている知的な生命体がいるかどうか?」という問題に対しては、懐疑的な見解を持っていました。

「もし存在していたとしても、コンタクトできるチャンスはほぼない」と考えていましたし、ましてや「地球に来訪するような可能性もないはずだ」という見解を示していました。実際に、次のように。

たとえ他の恒星系で生命が発展しても、
私たちが人類と見分けがつく段階は、
宇宙の時間の長さから考えると
きわめて短いあいだだけで、
偶然その段階の知的生命体と出会うチャンスは
ほとんどないでしょう。


『ホーキング、未来を語る』より

さらに、そんな存在と積極的に交流を図ることは、地球人にとってプラスにならないという立場でもありました。その知的生命体が、必ずしも善良な意志を持って地球人と交流するとは限らないと警告もしています。

もし異星人が地球にやってくれば、
その異星人は《ET》よりも、
《インディペンデンス・デイ》での異星人のほうに
似ているにちがいありません。


『ホーキング、未来を語る』より

と言っているくらいですから。

ただ私の場合、少しのん気に思われてしまうかもしれませんが、やはり、我々以上の科学文明を持った知的生命体がもしいるならば、ぜひとも交流してみたいと思います。

当然、彼らは地球人より進化しているわけで、そこに至るまでには我々が今、直面している文明の存続を脅かす諸問題を経験して、それをクリアし、地球文明より先に進化していることになります。そうすると、地球が今抱えている諸問題をすでに解決している先輩という意味では、いろいろな知見を得られることになると思います。

もし地球人が、地球よりも科学が進んだ知的生命体と遭遇できるチャンスがあるとしたら、やはりそこで聞くべきは「どうやって、あなたたちは滅亡せずにいられたんですか?」ということだと思います。

おそらく大きな戦争や環境破壊、パンデミックを乗り越えてきた存在のはずです。「どうやって生き延びたのか?」という問いは、現在の地球人にとって非常に重要なものです。少なくとも、地球人類が歩んできた以上の「時空」を歩み続けて、文明を維持してきた種族のはずですから、その種族から多くのことを学ぶことができるかと思います。

▲地球外の知的生命体は、どうやって生き延びてきたのだろう? イメージ:PIXTA