ポカリ1本で5日間
大学の先輩から浸才をやらないかと誘われたのが、お笑いに足を踏み入れたきっかけでした。
別の大学の学園祭で、緊張しながらも披露したネタが意外にウケて、その快感が忘れられなかったんでしようね。 芸人になりたいと思うようになりました。
ただ、その先輩が辞めると言い出して困った。 大学の単位も足りない。だったらNSCだ。だけど、 中二の頃から引きこもっていたから、知り合いがいる関西圏から出たい……。
結局、 誰にも相談せず、電話だけで部屋を決めて上京。山手線の大塚駅にあった3畳の部屋は家賃8000円。もちろん、大学は辞めました。
上京してしばらくは、食べるものがなくてポカリ1本で5日間を過ごしたこともあります。あまりに空腹で手足がしびれたときはさすがに焦りました。夢見て入った芸人養成学校も、金が続かなくて途中退学。寝る前に将来のことを考えると、怖くて仕方がありませんでした。
当時は一日一食が当たり前。スーパーの総菜が割引になるタイミングをずっと狙っていた。 常に腹が減っていて、スーパーで菓子パンを買うときは興奮状態(笑)。
なかでも『世界飯店』の焼鴨飯は、バイト代が入ったり、ライブで数千円のギャラをもらったときに食べる、一番のごちそうでした。初めて食べたときは、うまさで胃が驚いたくらい。
まあ、空腹だったから何食ってもうまいんですけど(笑)。
昔から目標としていたのは、大木こだま・ひびき師匠です。自分も正統派漫才を目標としていたのに、気がついたらシルクハットをかぶってた(笑)。何かを認めると、人は強くなれるんでしょうね。
先の見えなかった下積み時代を思い出すとゾッとします。二度と戻りたくはない。娘はいま3歳。健康にも気をつけて、子どもが成人するまで稼がないといけないと思っています。
※本記事は『週刊実話2016年7月21日号』(©日本ジャーナル出版)に掲載された内容を転載編集したものです。
『芸人下積みメシ』は、次回9/3(金)更新予定です。お楽しみに!!
■世界飯店
住所:東京都豊島区北大塚2-14-8
電話:03-5972-1966
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店前にご確認ください。