元Jリーガーの嵜本晋輔氏が経営する「バリュエンスホールディングス株式会社」と、東京の葛飾区を拠点とするサッカークラブ「南葛SC」の合同事業発表会が8月31日に行われた。

▲(左から)嵜本晋輔氏、高橋陽一氏、岩本義弘氏

南葛SCは世界でも唯一無二のサッカーチーム

かつてサッカークラブのガンバ大阪に所属し、退団後、元Jリーガーとして初めて上場企業の社長となった嵜本氏。バリュエンスホールディングス株式会社(以降、バリュエンス)はブランド品、宝石、貴金属等の買取専門店「なんぼや」の展開や、スポーツチーム公認で選手が使用したユニホームなどをオークションにかけ、その収益をチームに還元する「HATTRICK」などのサービスを行っている。

南葛SCは、今年で連載40周年を迎える漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏が代表を務め、現在Jリーグ昇格を目指している。

両者のつながりは、今年の3月にバリュエンスが南葛SCのオフィシャルパートナーに就任したことからスタート。7月にはバリュエンスが南葛SCの株主を取得し経営に参画、嵜本氏が株式会社南葛SCの取締役に就任していた。

この日の合同事業発表会には嵜本氏と、高橋陽一氏、そして南葛SCのゼネラルマネージャーである岩本義弘氏が登壇。

今回の取り組みについて、嵜本氏は「南葛SCというのは、キャプテン翼という世界的に知名度のあるアイコンを扱える唯一無二のサッカーチームである」と強みを説明。

▲嵜本晋輔氏

現在コロナ禍により、スポーツ界全体が緊急事態に陥っていると語り、これからのクラブ経営について「大きな収益となる4つの柱が、スポンサー収入、チケット収入、グッズ収入、放映権の収入と言われています。私たちは、この4つの柱に依存しない経営というのが、これからのクラブ経営で求められる在り方なのではないかと、岩本さんを中心に何度も議論した。世界中の企業に対してキャプテン翼を活用した企画提案をして、その商品を製造・販売して得られた収益の一部を、南葛SCのチームの強化費に変えていく」という仕組みを企画していると話した。

世界中に拠点を持つバリュエンスが営業活動を開始したところ、たった2か月で国内外大手企業20社以上からオファーがあり、そのうち数社とは具体的な話にまで及んでいるという。

東京の下町にJのクラブがないなら自分で作る

ご存じのようにキャプテン翼は全世界で人気が高く、放送されている国は50か国以上。高橋氏は「イニエスタ選手・メッシ選手・トッティ選手・ジダン選手などが、子どもの頃に見て、インスピレーションを受けたと言ってくれる。イタリアやスペインなど、ヨーロッパに取材に行ったときもキャプテン翼が知られていることで、選手から自分に会いたいと言ってくれるし、どのクラブに行っても歓迎してくれる。翼くんには本当に頭が下がるっていう感じですね(笑)」と笑顔で話した。

▲高橋陽一氏

岩本氏も「著名なスター選手が来日したとき、スケジュールが詰まっていたとしても、会って絵を描いてほしいと頼まれる。フランス代表のエムバペ選手もそうでした」と、改めてキャプテン翼の影響力の高さを感じさせるエピソードを明かした。

「その地域の人たちが、試合を楽しみに生きていけるのはすごく良いこと。でも、自分が生まれ育った東京の下町にJのクラブはない、じゃあ自分で作るしかないかな」(高橋氏)との想いで作られたという南葛SC。23区初のJリーグ昇格チームを目指しており「最短でも3シーズン後。ただ最短で上がれるチームというのはあまりないですが、年数をかけずにJリーグまで辿り着きたい」(岩本氏)と語った。

▲岩本義弘氏

バリュエンスとの合同の取り組みに関して、岩本氏は「最初は南葛SCのスポンサーになってくださったんですが、ここまで一緒にやってくれるとは!って気持ちです。こちらとしては嵜本さんの持つ熱量ですぐにOKし、高橋先生にもすぐにお話したんです。上場企業で話を通すのがどれくらい大変なことか、僕も素人ではないのでよくわかるんですが、本当にスピードが早くてびっくりしました」と明かすと、嵜本氏は笑顔で「社内の取締役、社外の取締役、個性的なメンバーが多いんですけど、全員がキャプテン翼のファンだったというのが大きいです」と答えていた。

「それだけでは意見は通らないのはもちろんで、アスリートを支援するビジネスとの親和性という部分が1つ。そして最大のポイントとなったのは、単なる経営参画というだけではなくて、キャプテン翼という世界的なアイコンを用いて、日本のみならず世界に対して新たなビジネスを仕掛けていく。そういった戦略に全員が共感してくれたと言うのが1番の決め手になりました」(嵜本氏)と語った。

▲ライブドローイングで大空翼の絵を描く高橋先生

高橋氏は今回の合同事業について「(プレーする)選手だけじゃなく、経営にも素晴らしい選手が入ってきたなという感じ。ゴールに向かっていい準備ができていますね。まずはJリーグというゴールを目指したい」と意気込みを語り、南葛SCのユニフォームにライブドローイングで大空翼の絵を描き、イベントを締めくくった。

▲高橋陽一氏

▲南葛SCオフィシャルサイト