オレは人生でほとんど旅行に行ったことがない。

仕事で地方に行くことはよくあるのだけど、休みの日に自発的に旅行に行くという選択肢がないのだ。

別に旅先で寝られないとかも無いし、なんならその土地のご飯を食べたりお酒を飲むのも好き。

じゃあなぜ旅行に行かないかというと、とにかくめんどくさいと思ってるからだ。  

まずどこに行くか場所を選んで、そこにどんな名産や観光スポットがあるのか調べて、その日1日のスケジュール計画して、ランチはお店の閉まる時間があるから早めに食べて観光スポットに移動して、泊まる場所も繁華街から離れてるけど宿が素敵な所にするかとか、繁華街の近くで泊まりやすいとこにするとか、なんなら旅館が良いのかホテルが良いのか、次の日の朝食はつけるのかなんやかんや、、、、、

おい!なんだこの考えなきゃいけないことの量!
仕事かよ!
タスクまみれかよ!
金くれよ!
もういいよ!家で寝るよ!

となってしまう。

こういうのがめんどくさい人向けにプランが決まってるタイプのやつに行けば良いのだろうけどそれはそれで、好きにさせろよ!旅先で開放的になったオレの自由への翼を縛りつけるんじゃねぇよ!羽ばたかせろ!と思ってしまう。

そんな旅屁理屈癇癪エンジェルのオレだけども、ある時、前日に仕事がバラシになり、元々あった休みと重なり2連休が出来た。

せっかくの2連休。旅行に行くにはうってつけだ。

旅に対して散々文句ばかり言ったけど、旅側に1回くらいはチャンスをあげても良いのではないか。
でも1人で行くほどの勇気はない。
じゃあ誰か誘ってみて、一緒に行ってくれる人が見つかったらそれは運命。
旅してみようじゃないか。

ただ旅屁理屈癇癪エンジェルが思い立った時には、時計は0時を回っていた。
流石に前日の夜中に明日から旅行行ける人なんて見つかるわけないよなぁと半ば諦め半分で昔から仲の良い事務所の後輩の四千頭身の後藤に電話をかけた。

「もしもし、突然だけど明日から1泊2日で旅行いけない?」

「はい。行けます」

マジかよ。
行けるんかい。
それはそれでちょっと違う。
旅側にチャンスをあげるって言っても結果全員に断られてダラダラするつもりだった。
行けるのかよ。

奇跡的に休みの日が被っていたのだった。

ただなんの予定も決めてない。
突然現実味を帯びて来た旅行に怯え始める。

「ちなみにどこ行くとか決めてるんですか?」

「いや実はなんも決めてなくてノープランなのよ」
流石にこんな計画性が無ければ嫌になるだろう。

「そうなんですね。わかりました」

わかりました!?
何をわかったってんだよ。
なぜこんなに全てを受け入れられるんだよ。
いや待て、、ここで決定するのは早い。
もっと人数がいた方が良いだろう。
わいわい盛り上がった方が良いし。

「とりあえずもう1人か2人探してみるか」

「わかりました。 んじゃ後輩何人か聞いてみますね」

物分かり良すぎるだろ。
なんか変だと思ってくれよ。
理想的な執事かよ。

後藤の物分かりに怯えながらとりあえずメンバーをそれぞれ探すことになった。

ただそこからお互い片っ端から連絡するが全く見つからない。
そりゃそうよ。前日の夜中に連絡して日帰りならまだしも泊まりでなんか行けるわけない。
正しい流れが戻ってきた。

とりあえず勝手に中止も視野に入れつつ一旦寝てまた朝に連絡を取り合おうということになった。

そして当日の朝。
目覚めて思った。オレ今から旅行に行くのか。
だりぃ、、
自分から計画して誘っといて何をやってるんだ!
バカかよ!
 
旅屁理屈癇癪エンジェルなだめて後藤に連絡をする。

「もしもし とりあえず何時集合にしますか?僕車出しますよ!」

いつもロートーンの後藤の声がいつもよりワクワクしているのがわかる。
こいつなんて好奇心なんだ。主人公かよ。
こりゃ行くしかないないか。
車出してもらうのは申し訳ないので、とりあえず東京駅に昼前に集合することにした。

そして旅支度をしているタイミングで電話が鳴った。
昨日連絡をして返信の無かった後輩だ。

「すいやせん寝てました。どうしました?」

寝起き直後であろうまだぼんやりとした意識が声でわかる。

「今日明日で旅行行こうと思って連絡したんだけど突然無理よな また誘うわ」

「今からですか?了解です。どこ向かえば良いですか?」

なんと奇跡にたまたま2日空いてる第二号が見つかってしまった。
小倉は後藤よりも1年後輩で3.4年前に芸人を辞めて今はバーで働いている。
そんなにしょっちゅう遊ぶ後輩ではないが昨日ローラー的に連絡をした1人だった。

てかなんで皆こんな旅行に前のめりなんだ。
どこ行くかも何するかわかんないのに、旅行ってだけでOK出すなんてどんだけ旅行って魅力的なんだよ。

とりあえず11時に東京駅集合の予定で何時に来れるか聞いてみた所、10分くらい遅れるけど合流できるとのことだった。

いや準備早くて凄いな。
あまりの行動力にこっちから誘っといて引いてしまったがこれでメンバーは揃ってしまった。

後藤と小倉が仲が良くて、昔よく遊んでるのは知っていたので、ここはお互い集合するまで秘密にしてサプライズにするか。
ただこのちょっとした遊び心が最悪の事件になるとは。