昭和から現代までのサッカー用語や、サポーターから広まった用語などJリーグにまつわる750ワードを、Jリーグウォッチャー・平畠啓史がイラストを交えてわかりやすく説明した『平畠啓史の日本一わかりやすい Jリーグ語辞典』を上梓した。
発売を記念して、巻末に掲載されているJ1・横浜FCでプレーする中村俊輔選手との対談から、惜しくも書籍には載せきれなかった未公開部分をお届け! 中村選手が海外でのプレーで感じたことや、日本代表で長い間ともに戦った“あの選手”について語ってもらった。
セルティックでは観客の目を感じながらプレーしていた
平畠 海外では、これまでセリエA(イタリア)のレッジーナ、スコティッシュ・プレミアリーグ(スコットランド)のセルティック、ラ・リーガ(スペイン)のエスパニョールでプレーされてきましたね。
中村 はい。どのチーム、どのリーグでも、思ったことはいろいろあるんですけど、セルティック在籍時に感じたことは、観客から「すごく見られているな」ということですね。股抜きをしただけでも盛り上がってくれるので、プレーしていて非常に気持ちよかった。カメラも、そういうところをちゃんと拾ってくれるんですよ。
平畠 逆に、沸かせるプレーをしても、日本だとそこまで盛り上がらないな、と感じることもあるんですか?
中村 そういうことが多いように思います。ただ、玉乃さん(玉乃淳)の解説では「そこで股抜きしますか!」とか拾ってくれてましたね。
平畠 玉乃さんもスペインでプレーしていたから、そういうところに目がいくのかもしれないですね。
中村 国によっていろんな見方があって、例えばスペインや日本では、ゴール前でいいパスを受けて切り返ししたところをディフェンスにクリアされても(プレーの意図を)わかってくれるんです。
だけど、イタリアでは「なんで、すぐ打たないんだよ!」っていう反応が返ってくる。僕がいたのは20年近く前なので古い情報ですけど、当時のイタリアでは、とにかくシュートを打て! と言われていました。
平畠 たしかに、イタリアのフォワードは点を取ることに集中しているイメージがありますよね。
中村 フォワードの一番の役目は点を取ることですから、自分にアシストしてくれる選手を必ずつかんでおきたいんでしょう。ゴールするための動きを繰り返しながら、周りへは自分の受けやすいところへパスしてほしい、と要求されることが多かったですね。
レアル・マドリードに在籍していた当時のクリスティアーノ・ロナウドは、相棒のエジルが退団するとき、会長に噛みついたじゃないですか。ディ・マリアが退団するときもそうでしたけど、その気持ちは理解できるというか。
平畠 いいパスをくれる選手が、自分にとってもいい選手だということだと。絶対的な自分の味方を手放したくなかった、ということですよね。