争いの仕置き人になった福田健悟に訪れた1対10の試練。そこに現れたのは? さらには、舐められたら終わりの国道カーチェイス、付き合った彼女が組長さんのお嬢さんと発覚……など内容盛りだくさん。ジェットコースターのような展開を見逃すな!

時間無制限一本勝負でボクサーとタイマン勝負!

さすがの僕も年貢の納め時だ。今までの罰が当たった。観念するしかない、と思ったその時。ザワザワし始めた相手の視線の先には、ギャングイーグルの先輩たちが、公園に向かって歩いてくる姿が見えた。嘘みたいなタイミングだ。人数は相手と同じくらい。

「おい、あれ小野木くんじゃないか? ……嘘だろ? 高橋さんまでいるぞ」

奇跡が起きた。小野木さんや高橋さんは、地元では知らない人がいないくらいの不良。相手は見るからに意気消沈している。逆転勝利だ。そう思っていた僕の胸中とは裏腹に、公園に着くなり1人の先輩がこう言った。

「あれ? ひょっとして大勢で1人をボコろうとしてたのか? 卑怯なやつらだな。ソッチで1番強いヤツ出して、タイマンしろよ」

タ、タ、タ、タ、タイマン? 助けてくれるんじゃなかったのか? しかも1番強いヤツと言っている。相手の中で1番強いのはボクサーだ。10人に袋叩きにされるよりはマシだが、ボクシング経験者と未経験者の力の差は前から知っていた。友達のボクサーと1度グローブを交わしたときに、30秒でリングに沈められたことがあったからだ。もちろん前に出てきたのはボクサー。

逃げたい。でも無理だ。ここで逃げたら、確実にあとで先輩たちからお灸をすえられる。考えろ! 考えるんだ健悟。

「スタート」

相手はパンチの戦いに慣れている。それに接近戦にもつれ込んだら分が悪い。ルールは先に謝ったほうの負け。キックでいくしかない。合図と同時に、思い切り飛び蹴りで攻めた。クリーンヒット! 相手が体勢を崩した。その瞬間に顔面をめがけて、全力でパンチを打った。ここからは自分でも無我夢中すぎて、なにをしたか覚えていない。気づいたら自分のTシャツは、血で赤く染まっていた。

「ハァ、ハァ、ハァ。もういいだろ?」

「うるせー! どっちかが謝るまで終わらねーんだよ」

「わかったよ。謝るよ。悪かった」

「悪かったじゃねーよ!」

「すいませんでした」

僕の勝ちだ。こんなふうに誰かと殴り合うのは、初めてだった。ギャングイーグルに入るときにボクシングをしたが、10秒後にはダウンしていた。あのときは、グローブをつけて1ラウンド3分のパンチだけの戦いだった。今回は時間も無制限で、なんでもありのストリートファイトスタイル。恐怖も本気度合いも、比べ物にならない。体力は使い切っていた。

あとで友達のボクサーに話したら、相手は絶対に手加減をしていたと言われた。勝ってもギャングイーグルの先輩たちに何をされるかわからないから、自ら負けたと。決して否定はできなかった。それくらいプロとアマチュアのレベルは違う。とにかく先輩たちには助けられた。

「ありがとうございました」

先輩たちは何も言わずに送ってくれたが、心の中では情けない戦いをしたと思われていた気がする。飛び蹴りから入る戦いは、無様なファイトスタイルだと聞いたことがある。

舐められたままで終われない! 壮絶なカーチェイス!!

それでも次の集会に行ったときに、3代目ギャングイーグルの先輩たちとは距離感が近くなっていた。先輩たちのほうから話しかけてくれるようになって、同年代の仲間たちの見る目も違っていた。

その証拠に、僕の地元に遊びに来ることが増えて、常に10人くらいで一緒にいることが当たり前になっていった。所構わず馬鹿騒ぎをしたり、バイクで走り回っていた。

そのときにコンビニの駐車場にバイクを置いて話していたら、男女2人ずつの、計4人を乗せた車が駐車場に止まった。女の子の視線が気になる。軽く微笑んだら、微笑み返してきた。

「オイ、あの子たち、こっち見て笑ってたぞ」

「え? マジで?」

買い物を終えて車に乗り込もうとしている彼女たちを、仲間の1人と一緒に目で追っていた。彼女たちもずっと僕たちのことを見ている。彼女たちは車に乗り込んだ瞬間に、後部座席の窓を開けた。これはチャンス到来か? と思って、試しに手を振ってみた。

すると、なんと彼女たちもゆっくり手を上げて、中指を立てた。その瞬間に車は走り去った。僕たちは顔を見合わせて、言葉を交わすことなく、即座にバイクにまたがった。

「なに? なに? なに?」。何も知らない仲間たちは戸惑いながらも付いてきた。国道を突き進んでいく相手の車を追いかけながら事情を説明した。そういうことならと、全員で一致団結をして追いかけた。

時間は19時過ぎ。国道は車だらけ。信号待ちで止まったときに、並んでいる車の間を縫って、先頭にいた相手に追いついた。

「オイ、降りろ!」

無反応。すかさずドアを開けて、相手の車の鍵を抜いた。発進させないためだ。男2人を車から出して引きずり回した。そうこうしているうちに、信号は赤から青に変わった。クラクションの嵐。大渋滞を巻き起こしている。

「警察が来るから行くぞ!」

相手を車に戻して、バイクを走らせた。そんな僕たちを見て、後ろからクラクションを鳴らしていたであろう車が全速力で追いかけてきた。猛スピードで逃げたが、車には敵わない。あっという間に追いつかれて、バイクのオシリに車のナンバープレートがかするくらいまで距離を詰められた。ギリギリで細い道に入ったから逃げ切れたものの、轢かれる寸前。あわや大惨事だ。あんなに肝を冷やしたのは生まれて初めてだった。