岐阜でナンバー1のチーム「ギャングイーグル」に入るも高校を中退。通信制の学校に入って、最強のツレとなる山岡大志と出会う。もっと刺激が欲しい――気づけば、みんなから依頼を受ける争いの仕置き人になっていた。

教師とひと悶着を起こして定時制高校も退学

新一年生の交流を深めるという名目で、オリエンテーションが開かれた。人里離れた山道を歩いて、頂上の食堂でご飯を食べる。これが午前までのタイムスケジュール。午後からは近辺をウロウロして、自然と触れ合う。その段取りを再確認するために、食堂で打ち合わせをする予定だった。そろそろ始まる頃だが、なにやら騒がしい。

「うるせぇよ! 関係ねーだろ」

大志が揉めている。何があったかは知らないが、誰かといざこざを起こして注意をされているようだ。たとえ腹の立つことがあったとはいえ、交流を深めるオリエンテーションで、喧嘩騒ぎを起こすのは気が引ける。僕は大人しく席に座ろう。

そう思っていた、その時、なにやら不穏な空気を感じた。振り返るとコッチに向かって、中指を立てている男がいる。知らない顔だ。そんなことをするようなタイプには見えない。真面目な装い。なんだ? 1周回ってこういうタイプが、1番タチが悪いのか?

とにかく黙っているわけにはいかない。足早に相手との距離を縮めて、声をかけた。

「何だ? お前」

まだ中指を立て続けている。どういうつもりだ? ニヤニヤしながらコッチを見て……いや違う、目線が少し外れている。後ろを見ると、同じようにニヤニヤした男が、中指を立てていた。中指を向けた相手は、別の相手だった。なんたる醜態。周囲の目は白い。こんなことなら、大志が起こした騒ぎのほうがマシだ。

説明会が終わって大志と合流。午後からは2人でタバコを吸いながら、サボって1日を終えた。

サボったといえば、校門の前で授業が終わるのを、座って待っていたこともあった。門の横には、目安箱が設置されている。どうせ俺たちの意見なんか反映されない。見せかけの正義を掲げて良い格好をするな。偽善者め! こんな学生運動さながらの動機で、僕は近くにあったホースを箱の中に突っ込んだ。水浸しになっている目安箱を見て、偶然そこに居合わせた教師が声を張り上げた。自分がやったわけではない。証拠はあるのか? と頑なに主張すると、矛先は大志に変わった。

「お前か!」

「ふざけんな! 俺じゃねーよ!」

「福田が違うって言ってんだろ! お前じゃないのか!」

気づいたときには、大志は教師の胸ぐらを掴んでいた。これが引き金となって2人とも停学。反省文の提出を求められた。昔から文章を書くのが好きだった僕は、嘘八百を並べ立てて学校に戻った。大志は退学。このときのことは、大人になってからも何度か話したことがある。

「ほんと、あんときは俺1人だけ退学になっておかしいと思ったよ」

「反省文ちゃんと書いた?」

「書いたよ」

「なんて書いたの?」

「俺は悪くないって」

「それが原因じゃねーか! お前が退学になったのは、学校側のせいじゃなくて、お前の文章能力がなかったからだろ」

それでも大志は、毎回のように退学になったのは自分だけ、と昔話を掘り起こす。かくいう僕も、実は大志が退学した直後に自主退学をしている。友達のいない学校生活に嫌気が差したからだ。

「俺は何をやっているんだ…」それでバイトを辞めた

もう母が再入学を勧めることはなかった。バイトだけはするように言われて、ガソリンスタンドで働き始めた。1か月の給料は約7万円。

「ギャンブルをやらない」と言うと、よく意外そうな顔をされるが理由はある。1か月の給料である7万円を、1日で全て使い切ってしまったからだ。

このときは、走馬灯のようにいろんなことが頭の中に甦った。汗水垂らして頑張ったこと、朝早く起きて出勤したこと、失敗をして頭を下げたこと。この全てが1日で不意になったと考えたら、馬鹿馬鹿しくなってスパッとやめた。

ほかにもラブホテルのバイトをやったこともある。清掃業務以外に、コンドームの仕分け作業も任された。パートさんたちと一緒に、薄いコンドームと厚いコンドームに分けて並べていく。

「これは薄い! こっちは厚い! これは薄い!」

このときに、薄いと言ったタイミングでドアが開いて、頭頂部の薄いリーダーが部屋に入ってきた。

「なんだ? 俺のことか?」

その場にいた全員が言葉を失った。せめてパートさんたちには否定をしてほしかったが、気を遣っていたのか、気まずい空気が流れた。

新聞配達のバイトをしたときは大変だった。最初は自分が担当する地区を経験者と一緒に回って、慣れてきたら1人になる。外にポストが設置されているのは普通だが、ガレージを開けないと、ポストまで辿り着けない家もある。研修期間を終えて、指導係がしていたように、ガレージを開けてポストに新聞を入れようとしたときだった。

「ウゥ〜〜〜、ガンッ!! ワウ、ワウ、ワウ!!」

扉の横につながれていたドーベルマンがブチギレている。腰が抜けそうだった。小屋というよりは、牢屋のような檻の中に入っていたが、今にも鉄格子を破壊しそうな勢いで体当たりしている。前の担当者のときに吠えなかったのは懐いていたからだ。その証拠に、僕も1か月後には吠えられなくなっていた。

12月31日。1年の最後に心温まる出来事があった。いつものようにポストに新聞を入れようとしたら、投稿口に張り紙が貼ってある。

『一年間ご苦労さまでした。来年もよろしくお願い致します』

キツければキツイほど人の優しさは身に沁みる。配達を終えてセンターに戻ると、社長からはお年玉をもらった。やっていて良かった。心からそう思えた。でも、雪が降る中で自転車がスリップして転んだときは、散らばった新聞を拾い集めながら心の中で呟いた。

俺は何をしているんだ? 俺が入っているのは地元で一番のギャングチームだぞ?

赤い服を見て逆らうヤツなんて存在しない。それが今は、下に落ちた新聞を拾い集めている。働いているときの自分と、悪さをしているときの自分が違いすぎる。だから辞めた。

ほかのバイトが長続きしなかったのも似たような理由だ。結局、プー太郎に逆戻り。この日から、ギャングイーグルとしての自分に見合った行動を目指すようになった。