家庭裁判所で下された審判は「鑑別所に4週間」。身体検査を経て、部屋に向かった福田を待っていたのは、小池良輔・三上裕太・エルビンの3人だった。この偶然の出会いが、「45」と呼ばれる奇妙な人生に大きな影響を与えることとなる。あまりにもリアルな鑑別生活も見逃せない。

入ってたから知っている!鑑別所のルーティーン

良輔と裕太と僕は同い年だった。彼らは同じ暴走族で、一緒にバイクで走っているところを逮捕されたとのこと。エルビンは年下のブラジル人。3人は1週間前から同じ部屋に入っていて仲良くなっていた。

「コイツこう見えて年下なんだよ」

「そうなんだ」

「何をして捕まったか教えてあげたら?」

「ん? あぁ、警察を殴った」

ヤバイやつじゃねーか。でも悪いやつじゃなさそうだ。話によると、仲間が捕まりそうになったのを助けようとして、警察に手を出してしまったらしい。

こんな話をして盛り上がっていると、鑑別所の看守(ここでは先生と呼ぶ)に注意を受けた。1回の注意につき、マイナス1ポイント引かれる。このポイントがマイナス10になると、少年院行きが決定する。もともと少年院に行くことが決まっている者には関係ないが、他の者には決して無視をすることができないルールだ。

部屋の前には、50メートルほどの廊下が横に続いている。この廊下沿いには、僕たちの部屋を含めていくつかの部屋がある。部屋はガラス張り。反対側には壁しかない。先生たちは壁側に背を向けて、ガラス張りの部屋の方だけを見ながら一直線に歩く。このときにルール違反をしている者を見つけたら、ノートにチェックが入る。この見回りは分刻みで行なわれる。気を抜く瞬間は与えられない。

「ラジオ体操だ」

先生に声を掛けられて、廊下に出た。部屋の前に整列していたら、他の部屋からも緑色のジャージを着た連中が出てきた。奥の壁にかかっている布の隙間からは、チラッと赤色のジャージが見える。完全に隔離はされているが、隣には女子がいるようだ。外に出て、約20名の強面男子たちが会話も接触もなくラジオ体操を始めた。女子も別の場所で同じようにしているのだろう。

このあとは昼食の時間。小さな窓口から料理を受け取るのは留置所と同じだが、味は鑑別所のほうがマズかった。留置所のご飯は白飯だったが、鑑別所のご飯は麦飯。ダイエット中の女性にとっては普通の食事かもしれないが、僕にとってはDNAが戦時中を思い出しかねないような食事だった。

食後は貼り絵の時間。とても楽しいとは言えない作業だったが、留置所に比べると退屈ではない。やることがないよりはマシだ。次は読書の時間。先生に紙を渡されて、好きなタイトルが書いてある横の項目にチェックを入れる。

そのあとは夕食を食べて、食後は入浴の時間。留置所では1週間に1回しかなかった入浴タイムも、鑑別所は集団生活を余儀なくされるからか、3日に1回の頻度だった。だが制限時間は10分。浴槽に浸かる時間をできるだけ長くするために、頭と体を高速で洗った。

風呂からあがると、次は歯磨きとうがいの時間。うがい薬を水で薄めて喉を洗う。そして最後にパジャマに着替えてオヤスミの挨拶をする。この挨拶は、横1列に4人で正座をして並ぶ。他の部屋でも同じように挨拶をしているのがわかる。なぜなら、奥の方から徐々に声が近づいてくるからだ。ガラスの方を向いて、整列をしながら先生が来るのを待つ。

「おやすみなさい」

先生の挨拶に続いて、僕たちも挨拶をする。これには全員が揃わないと終われない、という決まりがある。1発で終わることもあれば、何回も繰り返す場合もある。このように、寝る寸前まで気を張っていなければならないのだ。これが1日の流れ。