大事な仲間に言語障害が残るかもしれない――三浦の復讐を果たした福田健悟の前に現れたのは警察官だった。「覚えておけよ。タダじゃ済まさねーからな」。福田に襲い掛かる孤独と強烈な取り調べの数々。果たして仲間とチームのことを守れるのか?

数人の警察官がいきなり自宅にやってきた!

「ドン、ドン、ドン、健ちゃん! 警察が来てる」

ノックの音で目が覚めた。ドア越しに祖母の声が聞こえる。眠たい。なによりも先に眠気を感じた。直後。すぐに血の気が引いた。部屋の鍵を開けてベランダへ飛び出すと、家の周りには刑事らしき人影が見える。部屋に戻って数秒も経たないうちに、5~6人の男性刑事が入ってきた。

直感で、白いあごヒゲの男がトップだとわかった。ほかの若手刑事は何かを探している。どうやら、先日の抗争で凶器を使ったのが僕たちだと疑われていたようだ。この段階で、警察が掴んでいる情報は曖昧だとわかった。

母親がリーダーらしき刑事に事情を聞いている。大丈夫だ。どれだけ聞かれても問題はない。部屋の中を探しても何も出てこない。家宅捜索を刑事たちが続けているあいだに、署で取り調べを受けることになった。シラを切り通せばいいのだから問題はない。母親に心配しなくていいと伝えて、車に乗り込んだ。

外に待機していた刑事の運転で警察署に向かった。取調室に通されて尋問が始まった。

「3週間前に岐南駅で喧嘩しただろ?」

「そんな前のこと覚えてねーよ」

「自転車を投げたのは誰だ?」

高崎だ。そこまで知っているのか。誰に聞いたんだ。なんにせよ、確認しなければいけないということは、確証を得ていないということだ。口を割るわけにはいかない。知らぬ存ぜぬでごまかした。また来ると言い残して、取調官は諦めて部屋から出ていった。30分後。ようやく取調官が戻ってきた。

「自転車投げたの高崎じゃねーか。本人が認めたぞ」

ということは、高崎も今ここにいるのか。取調官が嘘をつく理由はない。つまり、逮捕された可能性が高いということだ。なんで認めてしまったんだ。認めなければ逃げ切れたはず。粘着質な取り調べに音を上げたのだろうか。

気持ちはわかる。同じ閉鎖空間で、何度も何度も同じことを聞かれて音を上げたのだろう。だからと言って白旗を上げたら思うツボ。こういうときは、他のことを考えるに限る。取調官の尋問は全て無視をした。

「聞いてんのか、コラ!!」

突然、がなり声を上げて机を叩いてきた。何をしてるんだ? こんなのハッタリに決まっている。今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた自分に通用するはずがない。取調官の名札と顔を交互に見て、意味ありげな表情で言った。

「楽しみだなぁ」

俺たちの情報網をナメるなよ? お前の後藤という名前と、刑事であるという情報さえわかれば、身元を調べるのは簡単だ。そう伝わるように不敵な笑みを浮かべた。それを察したのか、今日はこれで帰っていいと言われた。

取り調べ室のドアが開いて、取調官は左に。右からベテラン風の刑事がツカツカと近寄ってきた。このときに言われた言葉は忘れられない。

「覚えておけよ。タダじゃ済まさねーからな」

確信を持ったような言い方に、少し身震いがした。こんなの脅しだ。証拠がなければどうすることもできない。何度も早く忘れるようにと自分に言い聞かせた。

家に帰ると、両親は何があったのかを説明するように言った。2人は僕がギャングチームに入っていることを知らない。ましてや、地元で最大規模のチームのリーダーだなんて、全く思っていない。警察が家に来るのは異常な事態だが、幸いにも向こう側の情報不足で手違いだったとごまかすことができた。