2020年に学校教育の大黒柱ともいえる「学習指導要領」が大きく変わりました。この変革を「明治維新以来150年ぶりの大改革」と表現する人もいるほどです。教育評論家の石田勝紀氏に理由を聞くと「子どもたちが、これから生きていくのに必要な資質や能力について、見直しをしたから」だそうです。子どもたちに必要な“力”とはなんでしょうか?

※本記事は、石田勝紀:著『子どもの「読解力」がすぐ伸びる魔法の声かけ -本は読まなくてOK!-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

読解力が今まで以上に求められる時代

2020年を境に学習指導要領が変わり、さまざまな大きな改革といわれるものが注目されています。

これまでの教育では「唯一の、同じ正解」を出すため、たくさんの児童たち、生徒たちが必死に答えを探していました。それなのに、今では“人と異なる見方や考え方のほうが重要である”という、真逆の状況になってしまったのです。

もし、人と同じ考えや意見ばかりであれば「別に君でなくてもいいよ。ほかにもたくさんいるから」と言われる可能性もあるのです。

AI(人工知能)は、そのようなパターン化できるものが大得意です。このため、AIにとって代わられることすらあるでしょう。ですから、多くの児童・生徒は困惑するかもしれません。しかしこれが21世紀なのです。ただ、本質的に見てみると、実はこちらのほうが楽しいし、人間的といってもいいでしょう。

人はみな違っているのだし、価値観や考え方が違っているのが本来の姿であって、同じであることのほうが怖いことなのです。

新しい「21世紀型」では、これからの子どもに「思考力」「判断力」「表現力」などの能力が問われることになります。それらの力の前提として「読解力」が必要であるといってもいいでしょう。なぜなら、意味が理解できなければ、思考も判断も表現もできないからです。

ところが残念なことに、子どもたちの読解力は想像以上に低下しています。教科書が読めない、理解できていないと、子どもの成績が上がらなかったり、勉強が嫌いになったりするのは、当然の結果です。

▲子どもたちの読解力は想像以上に低下している イメージ:msv / PIXTA

人間がAIに勝てる唯一の方法とは?

次のような驚きのデータが発表されています。

「今後10~20年間にかけて、現在日本国内で担われている職業の49%が人工知能などのロボットによって代替できる可能性がある」(2015年2月、野村総合研究所〈NRI未来創発センター〉)。

▲『子どもの「読解力」がすぐ伸びる魔法の声かけ』より

調査の中心になったのは、イギリス・オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士。2人がそれまでイギリス・アメリカで同様の調査をしてきた研究の「日本国内版」として分析したものとされています。

この発表を受け、日本でも議論が沸き起こったので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

「約半分もの職業が人工知能に奪われてしまう!」「半分以上の職が消滅する!」

確かに、人工知能の技術の進歩や人口減少の社会問題もあり、そのような流れが加速するのは間違いないでしょう。しかし、すべての職業が人工知能に代替されるわけではありません。なぜかというと“人工知能は意味を理解できない”からです。

人工知能は、膨大な情報から“将来使えそうな知識”を見つけること(=学習)は可能ですが、“意味を理解したうえで答えを出すこと”は、まだできないとされています。

つまり、私たちはこの「意味を理解する力=読解力」を磨くことで、AIとまったく違う土俵で闘えることになります。このようにAI時代は、読解力を高めるメリットが、ますます大きくなるのです。

▲AI時代を子どもたちが生き抜くために必要な力を磨く イメージ:yoshan / PIXTA