コロナ禍の影響で、残念ながら一般には深く浸透していない印象がありますが、2020年という年は、日本の教育界において大きな節目の年でありました。学校教育の大黒柱ともいえる「学習指導要領」が大きく変わったからです。教育評論家の石田勝紀氏に、これから子どもたちが経験する新教育についてどうするべきか、親としての心構えを聞いてみました。

※本記事は、石田勝紀:著『子どもの「読解力」がすぐ伸びる魔法の声かけ -本は読まなくてOK!-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

2020年の「教育の大改革」をご存じでしたか?

コロナ禍の影響で、残念ながら一般の方には深く浸透していない印象がありますが、2020年という年は、日本の教育界において、実は非常に大きな節目の年でありました。どれほど重要だったかというと、教育界のこの変革を「明治維新以来150年ぶりの大改革」と表現する人もいるほどです。

では、いったい何が変わるのかというと、大きく2つ挙げられます。1つ目は、日本の学校教育の大黒柱ともいえる「学習指導要領」の内容がこれまでになく大きく改定されること。

2つ目は「大学入試センター試験」が廃止され、「大学入学共通テスト」という新しい試験に切り替わることです。これは、小学校・中学校・高校までの教育の出口とも形容できる「大学入試」の変化に合わせて、“教育全体が変わる”と思っていただいてよいでしょう。

「今まで続いてきた学習指導要領を、なぜ2020年に変えたのか?」

そんな声も聞こえてきそうですね。そもそも「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めているカリキュラム基準のこと。今までも約10年に一度、改訂されてきました。

▲「学習指導要領」を定めている文部科学省 出典:Caito / PIXTA

もちろんそこには理由があります。社会全体が変化しているからです。

学校とは、社会と切り離された存在ではなく、社会のなかにあります。グローバル化や急速な情報化、技術革新など社会の変化に沿い、“子どもたちがこれから生きていくのに必要な資質や能力”について、見直しを定期的に重ねるのは、ごく自然のことでしょう。

例えば、1989年の改訂時には「生活科」が小学校1.2年で導入されたり、高等学校の「家庭科」が、男女共に必修となったりしました。また2008年、2009年の改訂時には「外国語活動」が小学校5.6年で導入されています。

もちろん「学習指導要領」ができるまでには、多くの有識者らによる議論や、一般の人たちからの意見募集などが行われています。

「教育」が変化していっても読解力は必要

ではいったい、2020年の改訂では、何が大きく変わったのかをお話ししていきましょう。表面的には大きく変わった指導要領ですが、その根幹には読解力(思考力という名称で書かれています)があることがわかります。

ちなみに、思考力は思ったり考えたりする力のことですが、読解力は「意味を理解する力」と私は定義しています。意味が理解できなければ、そもそも考えることや思うことすらままならないでしょう。ですから、思考力の中心には読解力があると考えています。

しかし、このような言葉の定義ばかりを議論しても混乱してしまうこともあるため、“読解力が重要”という意味で進めていきます。いずれにしても、思考力と読解力が、これからはさらに重要視されるようになるということです。

逆にいうと、どんなに素晴らしい改革がなされても、読解力がおぼつかない子にとっては「点数が取れない」「勉強に興味がもてない」という状況が続くことになります。

例えば、パソコンにいくら慣れ親しんで、手早く扱えるようになったとしても、“動画ばかり見ている”という子の場合、動画内容にもよりますが、学びへの意欲が高まり、学力が向上するかどうかは疑問が残ります。受動的な媒体では、主体的に考えることは難しい面があるからです。

「英語」や「ICT教育」は、この改革の目玉ではありますが、英語の能力もデジタル機器を扱う能力も、あくまで道具です。その根幹に読解力がなければ、大きな学びを得たり、成長したりすることにはつながりません。

とはいえ、“時代はどのように変わっていくのか”の方向性を大まかに把握しておくことは、安心材料になることでしょう。新しい変化を億劫がったり、振り回されるように感じたり、負担に思うことはありません。お子さんが経験する新教育のことを、知識として最低限知っておきましょう。

「ほんの少し知っていること」と「まったく知らないこと」には大きな隔たりがあります。これを頭に入れておいていただければ、お子さんを導く際に、きっと役立つはずです。

▲「教育」が変化していっても読解力は必要 イメージ:ハル / PIXTA