OECDの調査では、労働者の平均年収が韓国より少なくなった日本(韓国42,285ドル、日本38,617ドル)。このままでは近い将来、日本の労働者が中国や東南アジアに出稼ぎに行く日がくるかもしれません。我が国がとるべき経済政策とは? 産経新聞特別記者で、日本経済について警鐘を鳴らし続ける田村秀男氏に聞いてみました。

※本記事は、田村秀男:著『「経済成長」とは何か -日本人の給料が25年上がらない理由-』(ワニ・プラス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

実体経済と金融経済の違い

現代の経済というものを考える際に、前提にしなければならないのは、実体経済と金融経済(または貨幣経済)があるということです。まずは実体経済なのですが、これはGDP(国内総生産。一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額のこと)に直結していて、モノとサービス、そして人が動く世界です。

▲実体経済はGDPと直結している イメージ: PanKR / PIXTA(ピクスタ)

もうひとつの金融経済、こちらのほうは資産市場において動きます。例えば、株式が該当します。株式は、いわば企業にとってみれば借金です。元本(株価)は払う必要はないけれど、配当はしなければなりません。

株式市場では元本が変動して、どんどん上下して、それが投資家同士で売った、買った、得した、儲けた、損したという話になるわけです。

そして債務、借金をしての投資です。つまり、債務の市場ということになります。これには国債、企業の社債、諸々の証券類があります。

要するに、借金をそのまま商品にしているわけです。そのことによって栄える市場です。とくに金融市場の要になるのが国債です。なぜかというと、国債はその国の政府が最終的に払う、つまり返済するものだからです。その返済の根拠になるのは税金です。国民の税金で返済できるから、これは投資側からすると、非常に損失のリスクが低い「安全資産」という評価ができるのです。

だから、金利(利回りといいます)が安定するわけです。そして、基本的には低い金利になります。要するに買い手がきちんとつくわけですから。それゆえ高い金利にしなくてもよい、借金する政府からすれば、非常に安定した債務の手段ということになります。

金融経済は、資産市場を中心にお金がグルグル回っています。そして、そこからお金が実体経済に入ってきて、設備投資や雇用に活用され、利益を上げたら、また金融経済へ出ていくという関係にあるわけです。だから、実体経済こそがGDPであるといえます。

どんどんと巨大になっていく金融経済

戦後の高度成長が落ち着くとバブルになりました。突如、不動産価格や株価がどんどん上昇したのですが、これは高度成長の結果、生み出された潤沢な資金をもとに、金融や資産運用(とくに不動産)で大幅な利益を上げるケースが急増したことが背景にあります。投資家や企業はもちろん、一般庶民までが投資や消費に前のめりになり、景気が過熱したわけです。

▲どんどんと巨大になっていく金融経済 イメージ:Audtakorn / PIXTA(ピクスタ)

加熱すると揺り戻しがあるのが世の常で、これは潰えていきました。いわゆるバブル崩壊です。バブルというのは崩壊してから「あれはバブルだったんだ」とわかるもので、当事者はイケイケどんどんだったのです。

バブルが崩壊して、資金が実体経済のほうに回らなくなってしまい、日本では実体経済が低迷したまま、金融経済ばかりが拡大しているのです。これが、株価ばかりが上がって、景気回復の実感が乏しい理由のひとつです。こういう状態が延々四半世紀続いています。

現下は、金融経済のほうが実体経済よりもずっと大きくなっています。

なぜかというと、実在するモノやサービスで構成される実体経済は資金、つまり元手がないと大きくなりたくてもなれないからです。お金は、儲かる見通しのある市場に行くものです。実体経済よりも巨大かつ成長している金融経済に向かうのは当然のことです。

一方で資金、お金はある意味で自己膨張、つまり自分勝手に利益を求めて動いてしまいます。人間の欲望がそうさせるわけです。これは法で縛って規制していくしか方法はないと思います。

例えば、中国のような、“世界秩序を乱す自分勝手な”国にはお金は貸さない。ドルとの交換も制限する、というようなことです。