なぜ三浦は、僕のことを『45』と呼んだのか? 謎は解けぬまま、時間だけは過ぎ去っていく。そんな日々の中で、読書の魅力に目覚めた福田健悟は、ふと過去の忘れ得ぬ出来事と対峙することになる。あのとき、なぜ父は僕のことを殴ったのか――そんな迷える自分に母親が言い放った衝撃的な一言とは!?

「警察に言うぞ!」釈放されたばかりなのに・・・

三浦は僕のことを『45』と呼んだ。ふざけているのか? いや、三浦には留置所で『45』と呼ばれていたことは言っていない。誰かに聞いたのか? いや、誰にも言っていない。どうなってるんだ? また電話をかけようかとも思ったが、全てが吹き飛ぶくらいショッキングなメールが届いていた。

「早く商品を送れよ! 詐欺師! 警察に言うぞ」

3週間前に送られているメールの内容だ。記憶が一気に4週間前にフラッシュバックする。4週間前の朝、僕は捕まった。その何日か前に、ネットオークションに商品を出品。落札後に代金を振り込んでもらって、次の日に逮捕。商品は振り込みの確認後に送る予定だった。

メールには警察に言うと書いてある。それもそのはず。購入者だけが損をするオークションなんて有り得ない。逆の立場でも、同じ方法で対処すると思う。今の僕は逆の立場じゃない。思うことはただ1つ。昨日出てきたばかりなのに。あんなにツラくて、苦しい場所に逆戻り? 絶望的だった。

「すいません。本当に悪気はなかったんです。今すぐ返金します。商品も送ります」

とにかく謝罪をするのが先決だ。自分のことよりも、相手のことを思っているとアピールをする必要がある。どういう返事が返ってくるだろう。そもそも返事が返ってくるかどうかも怪しい。携帯は片時も離せなかった。

「そんなの当たり前だろ! 今さら連絡してきて、なんのつもりだよ」

当たり前だが怒っている。せめてもの救いは、返事があったこと。あとは通報されたかどうかを知りたいが、ストレートに聞くわけにはいかない。相手から言ってくれるのを待とう。

「本当にすいません。諸事情がありまして……」

「ふざけんな! お前のやってることは犯罪だぞ」

ごもっともだ。事情を説明したいが、警察に捕まっていたとは言いにくい。でも、曖昧な言い訳でお茶を濁している、という印象を与えるのも得策ではない。文章を作っては、何度も打ち直して、無駄に時間だけを浪費していた。このまま長引かせたら、余計に感情を逆撫でしてしまう。本当のことを言うしかない。

「実は……、僕は以前あるチームに入っていまして、他チームとの揉め事で警察に捕まっていたんです」

「そんなの知らねーよ! とにかく早く商品を送れ! 金も返せ」

ピンときた。警察には通報していない。もし通報していたら、商品を送るようには言わない。この際、お金なんかどーでもいい。全ての予定を後回しにして、商品の郵送と返金を早急に済ませた。あまりに突然のハプニングで、三浦が『45』と呼んだことは、頭の片隅に消えていた。

この日、本当は保護観察官のところに行く約束をしていたが、電話で明日に変更してもらうように頼んだ。電話を切ってから携帯を見ると、ネットオークションの購入者から返事がきていた。

「お金はいいです。もう二度と同じことがないように気をつけてください」

そう言われても困る。この件に関しては、悪気があってやったことではない。ただ、今は寛大に許してくれたことに感謝する以外に選択肢はなかった。

そういえば、三浦からは連絡があったが、高崎からは連絡がない。あの2人は同時に捕まったから、同じタイミングで出てきているはずだ。試しに電話をしてみたものの出ない。ひょっとしたら、鑑別所でマイナス10ポイントたまって、少年院にいるのか? 折り返しの電話もなかった。