「やっぱり舞台には相方が必要だ」。ピンのネタ披露で痛い目に遭い、思い悩む福田のもとにかかってきた1本の電話の相手は、幼なじみで一緒に鑑別所に入っていた高崎だった。そんな高崎に、福田は「お笑いをやりたいんだ」という気持ちをぶつける。果たしてそのリアクションは? 

「でんでん虫クラブ」に編入してくれた高崎の優しさ

高崎は予想どおり、鑑別所での態度が原因で、少年院に入っていたようだ。話すのは1年ぶり。コイツは昔から変なやつだけど、気は良いやつだ。

「大丈夫か?」

勾留期間の長かったほうが、短いほうを気遣っている。

僕たちは小学校からの幼なじみ。初めて遊んだのは入学式のあとだった。家が近所だったのもあって、保護者たちも仲良くなった。

「帰ったら遊びに行くよ」

幼き高崎少年がそう言うと、互いの母親は顔を見合わせて笑った。式は午前中で終わり。高崎は本当に来るのだろうか? 突発的な発言に思えたが、目は真剣だった。どこか心待ちにしてリビングでくつろいでいると、急に押し入れの扉が開いた。

「ガサ、ガサ、ガサ」

この音と共に、押し入れの中から登場。僕たちが帰る前に押し入れに忍び込んで、息を殺して潜んでいたのだ。子どもの頃の高崎は、毎日のように僕の家に来て、ユーモアのあるイタズラを仕掛けた。

失敗したのは、盆休みの日。この日も例外なく、高崎は家に来た。なんの前触れもなく、突然リビングのドアを開けて大声で叫んだ。

「警察だ! 手を挙げろ!」

この時の福田家には、親戚一同が勢揃いしていた。その光景を見て、彼の顔は一瞬にして赤面。軽い気持ちで仕掛けたイタズラが、総勢20人に見られることになったのだから当然だ。

そんな彼が、小学3年生の夏に、深刻な顔をして相談してきたことがある。

「聞いてくれよ! 金玉が一個なくなったんだよ」

「もういいって。じゃあ見せてみろよ」

いつものように冗談だと思って、確認をした。ところが、彼の下半身からは、本当に金玉が1つ消えていた。落胆ぶりは半端じゃない。それもそのはず。自分だったら、気が気じゃない。

次の日。金玉の話は忘れて、他の友達と外でキャッチボールをしていた。友達が投げたボールを捕り損ねて、下に落ちたボールを拾いに行くと、ボールの横に小さな玉が落ちていた。それは、梅干しの種より大きくて、クルミくらいの大きさだった。色は白い。形状はツルツルじゃなくて、ところどころシワになっている。

間違いない! これは高崎の金玉だ! こんなところに落としていたんだ。アイツに返してあげないと。ポケットに金玉を入れて、大切に保管した。引き続きキャッチボールをしたあと、帰りに家まで届けに行った。

「オイ、高崎! 見ろよ! お前のだろ?」

「え? あぁ、ごめん、ごめん。もう見つかったんだよ」

おもむろにズボンを下げると、太ったオナカの肉から、失ったはずの片玉がひょっこり顔を出した。こうして思わぬかたちで、金玉行方不明事件は解決を迎えたのだ。なにはともあれ、見つかって良かった。

またの日。今度は、別の災難が降りかかる。高崎の家にトラックが突っ込んだ。ゲームをしている時に、急に爆音と衝撃に襲われたと言う。幸いにも怪我人はいなかったようだが、彼は落ち込んでいた。当たり前だ。だが落ち込んでいた理由が、当たり前ではなかった。家の破損ではなく、ゲームのデーターが消えたことにショックを受けていたのだ。子どもながらに、落ち込む理由そこ? と思ったが、黙って寄り添った。

逆のパターンもある。高学年になって、クラブ活動を決める日に、僕が風邪をひいて学校を休んだことがある。次の日。学校に行ってみると、自分で選べるはずのクラブ活動への加入が、勝手に決められていた。

「でんでん虫クラブ」。テーマは“学校をでんでん虫でいっぱいにしよう”。こんな気持ち悪いクラブに、入りたい人なんていない。誰も入りたがらないクラブを、なすりつけられたのだ。しかも活動の最後には、全員の前で発表会まである。もともとヤル気のないクラブで、発表会なんてできるはずがない。そんな僕のことを思って、高崎は自らのボールクラブを辞めて編入してくれた。