カートみたいに、いい感じのときにフッ…て消えたい

――お笑いもロックになぞらえられるところが多いですよね。本の中でも「スウェード」の項で永野さん書いてましたけど、多様性を許容することでツッコんじゃいけないことも増えて、それと同時に危うさの中にある魅力もなくなっていく。最近では、セクシャリティや容姿をイジるのはよくないとか、人を傷つける笑いはダメ、とかいう風潮がありますけど、そんななかで自身のお笑いのあり方について考えることはありますか?

永野 はい。でも、自分はある程度やって、怒られてもしょうがないと思ってる部分はありますね。変えないです。本当は時代に合わせて変えたほうがいいんでしょうけど、そこのギリギリの部分を攻めたいなと思うんですよね。ライブとかでは未だに危ないこと言ってますよ。ウケるから。気持ち悪いですよね。女性芸人の容姿イジりがいけないとかいうのに乗っかってく芸人は、ただテレビに出たいだけなんじゃないかと思います。

――テレビを主戦場にしている芸人さんは、エンタメだけではない、いろんなジャンルに進出していて、もしかすると一番セーフな人たちになっていますよね。

永野 たしかにたしかに。許されないですもんね。渡部さんとか多目的トイレで云々って言われてますけど、チャック・ベリーだってトイレで盗撮してますからね(笑)。ロックンロールの神様が。でも、そういうのが今は許されないですもんね。「実はいい人です」みたいのばっかりで。

――コロナ禍のご時勢というのもありますけど、その前からミュージシャンでも打ち上げやらない人増えましたよ。「明日、早いんで」ってすぐに帰る(笑)。

永野 僕もそれ、この前ありました。広島に行ったとき、翌日が大阪で、後輩3人と同じホテル泊まったんです。僕はすごく疲れてたんですけど飲む気になってて。それなのに後輩たちが「明日早いし、練習もあるんで失礼します」って帰っちゃって、ああ、そういう時代が到来したなぁって(笑)。

で、俺、コンビニで氷結みたいなの買ってホテルで飲むみたいな。今、ミュージシャンも「喉大事」とか言いますけど、いやいや、ガラガラで来いよ! みたいな(笑)。伝説になるだろって。

――そういう意味でも、もうセックス・ピストルズとかマニック・ストリート・プリーチャーズみたいなバンドは出てこないですね。

永野 「4REAL」(※)の「4」のところで周りの人が止めに入って、「REAL」まで彫らしてもらえないですもんね(笑)。「4」で止められても(笑)。

(※)4REAL……英国のバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズのギタリスト、リッチー・エドワーズが取材中、自分たちの本気度を記者に示すために腕に剃刀で「4 REAL」と刻んだ91年の事件。当時、衝撃的な血まみれの写真が音楽紙に掲載された。

 

――永野さんにはそういう願望はないんですか? 破滅に向かって進む、みたいな。

永野 そうですね……本当のことを言うと、あまり長生きしたくないです。勉強もできないし、社会的な信用もないし、音楽は好きなんですけど、ギターとかやろうと思ったこともないし。

じゃあ、なんでお笑いをやったのかというと……誇大妄想なんですけど、センスがあるんじゃないかと思ってるんですよ、独特の。時間はかかったけど、一応それで生活ができたわけだし。一個自分でもやばいなと思ってるのが、とてつもない理想とかがないんですよ、僕。面白いなって思うことはしたいし、ネタやるのも好きなんですけど、長生きして幸せでいるっていう図がどうも思い描けない。

だから、いい感じのときにフッ…て消えたいです。カートはカッコよかったじゃないですか。自分から逝った。ドラッグでもなく、計画的実行というのが新しいなと思うし、興奮するじゃないですか。でも歳とって、焼きが回ってきたというか、自分が今までバカにしてきた人たちが、幸せの種を蒔いていた“実”がなってるっていう実感があるんですよね。

俺はこいつのことバカにしてたけど、こいつのほうが全然幸せそうだぞ、という。自分は27歳でショットガン自殺する予定だったのが、それから20年生き延びてるような状態。あれ? と思いながらも「てへへ」と生きつつ、その裏では「てへへ」でもない自分もいて……最近あんま興奮しないんですよね。歳とってからの楽しさというのがわからない。

――急に盆栽にハマったりとかはしないわけですね。

永野 そう。ちゃんと勉強して、年金もらえるような生活を真面目にしてきた人は、そういうところにいくと思うんですけど、そうじゃなかった人間の精神的な孤独感とかは最近すごく感じますね。まあ……金さえあればいいと思うんですけどね(笑)。これで金なかったら哀れすぎて。金があればカバーできる(笑)。

――いや、無理に笑いで落とさなくてもいいですよ。この本を読んで、永野さんの正体はわかったので。真面目で潔癖で繊細な人なんだなって。

永野 潔癖ではあります。だからね……(そういう部分が全部出ちゃってる)懺悔みたいな本なんですよ、これは(笑)。

 

 
『僕はロックなんか聴いてきた~ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!』
発売:リットーミュージック
定価:¥1,760(税込)
プロフィール
 
永野(ながの)
1974年、宮崎県生まれ。1995年にデビューし、「ゴッホより普通にラッセンが好き」のネタでブレイク、孤高の芸人として人気を博す。音楽、映画にも造形が深く、YouTube『永野CHANNEL』でのディープ&マニアックなトークが支持されている。https://ameblo.jp/cawaiinecochan/、Twitter:@naganoakunohana、Instagram:@naganoakunohana