自由気ままな生活を父親にとがめられ・・・

サラリーマンを辞めて芸能の仕事をしたいと、親に伝えたときのことだ。

もしかしたら父親には「何をバカなこと言ってるんだ!」と反対されるかと思ったが、あっさりと「お前の人生なんだから好きにしろ」と言われた。

正直、俺は拍子抜けした。後々聞いたところによれば、父親も若いときに別のことに挑戦したい気持ちがあったが、実家の材木屋を手伝うという安定した生活をとってしまい、後悔していたそうだ。

だから、俺が会社を辞めると言ったとき、自分のように後悔させたくないと思ったから反対はしなかったんだろう。

ショーパブ時代は、深夜に酔っ払って実家に帰るという毎日を繰り返していた。いつも昼過ぎまで寝ていて、そのあいだに父親や妹が出勤する。朝食の時間は寝ていたから家族と会うことはほとんどなかった。そのうち付き合っていた彼女の家に泊まることも多くなり、実家には気が向いたときにたまに帰るくらいの生活だった。

▲イケイケだった

その頃には、かつてのように大きな確執は無くなっていたが、朝まで飲んで酔っ払ってたまに帰ってくる俺の生活に、父親もイライラしていたのだろう。

ちゃんとした企業で働いていた俺が、芸能界を目指すと言ったのに、フタを開けたら連日のように帰ってくるのは午前様で、時には1週間もフラフラと外泊を続けていた。だらしない生活をしている俺にイラついていたんだと思う。

ある日、父親に「そんだけ好き勝手やってるんだったら、家を出て一人で生活してみろ」と言われた。この時すでに25歳。そう言われても仕方ない歳だった。

正直、実家に居続けたのは家賃がいらないのが大きな理由だった。母親が作ってくれた料理がいつもキッチンにあったから、食費もほとんどかからない。自分の好きなことだけに金が使える生活は楽だったし、はっきり言えば親に甘えていた。

本気で芸能界を目指すには、自分にムチを入れてもいいのかもしれない。

一人暮らしを経験してみたかった俺は、職場からも近い西新宿の1Kユニットバスのマンションに引っ越すことにした。