ショーパブ店に潜り込んだはいいが・・・

当時のタレントの仕事に少し疑問を感じはじめ、なんとなくつけたテレビで見つけた、ものまねとショーパブに興味をもった俺。キサラ館はお世辞にも活気のある店ではなかったが、ここでものまねをすれば売れる近道だという思いは、俺の中で確信に変わりつつあった。

それから2回ほど、そのショーパブに客として見に行きモチベーションを高めた俺は、ある日、バイト雑誌にキサラの求人情報が載っていることに気がつき、すぐに応募した。

店のオープン前に履歴書を持っていくと、支配人のバッジを付けた人が面接をしてくれた。サラリーマン経験があり、既に水商売などのアルバイト経験がある俺を即戦力として期待してくれた様子だった。

▲ショーパブデビュー

面接のその場で採用となり、面接官からは「社員とバイトどちらがいい?」と聞かれた。アルバイトだと時給1000円でホールや洗い物などを担当する。社員だとホールや洗い物はもとより、発注や照明、ショーの構成も担当する。月に6日程度休みが取れて、たしか月収25万くらい。

本当はどちらでも良かったのだが、バイトの制服がダサ過ぎるのが気になってしまった。白のワイシャツ、トランプ柄のベストに蝶ネクタイは、田舎のサビれたスナックのボーイみたいだった。俺は「社員でお願いします!」と言った。

初日。出勤すると、サラリーマンにしか見えない恰幅のいい男性が俺に近づいてきた。俺よりすこし年上だろうか。

「店長です。よろしくお願いします」

ショーパブとはいえ、水商売。もう少しチャラチャラしたりイケイケな感じの人が店長だと思ったら、こんなにも真面目そうな人で拍子抜けした。きっと俺は久しぶりの夜の世界に身構えていたんだろう。 

店長は第一印象通りやさしい人柄で、丁寧に仕事を教えてくれた。水商売をひととおり経験してきた俺にとって、仕事を覚えるのはさほど難しいことではなかった。先輩たちともすぐに仲良くなれた。