芸人のヒロシさんから「スケベ西村」とあだ名されている、「バイきんぐ」のじゃないほう芸人、西村瑞樹が書いてしまった不思議なエッセイ。アラフォー芸人のリアル、ちょっとした事件、趣味のこと。有益な情報は一切ないが、なんだか読んだ後ほっこり元気になれる。鬱々とした日々を送っているビジネスマンにぜひ読んでほしい。今回は14年続けているというジグソーパズルについて。
※本記事は、西村瑞樹:著『ジグソーパズル』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。
終わらないジグソーパズル
暇な時に僕はジグソーパズルをやる。本当に気が向いた時だけなので年に2、3回くらい。年に2、3回なら結構やっている方ではないかと思う人もいるでしょうが違うのです、僕はまだ完成してない1000ピースのジグソーパズルを年に数ピースずつ、気がつけば14年という気が遠くなるほどの時間をかけてやっているのです。
1日1ピースやるだけでも3年もしないうちに完成しますからね。「完成させる気がないだろう?」とよく言われますが14年の間コツコツ数ピースずつやっているし、その間4回引っ越しして、そのたびに毎回作りかけのまま梱包しては開梱を繰り返し、ホコリがかぶればパズルを吸い込まないように掃除機をかけ、謎のちぢれ毛が紛れ込めば丁寧に取り除き、それはもう大事に扱っているのです。
いつか完成するのを夢見て。買った時は一目惚れでした。百獣の王ライオンが中心にいて象やキリンにゴリラなど動物園で見かける動物たち30頭くらいが向かってくるような絵で、何かを訴えかけてくるんです。
それに14年も経つと思い出もたくさん詰まっています。その間付き合っていた彼女にはみんな手伝ってもらいました。『東京ラブストーリー』のカンチとリカみたいに。なんなら仮初(かりそめ)の一夜を過ごした女性も数ピースほどハメています。
余談ですが、作りかけのジグソーパズルの下は何かを隠すのには最高に適した場所なんです。崩してしまったらどうしようという思考が働くので家族も敬遠するんです。
なのでぜひともジグソーパズルを始めてもらって、青少年にはエロ本を、奥様方にはヘソクリを隠してもらいたい。そして最後に、気になるジグソーパズルの完成はいつになるのか?答えるならばあのサグラダ・ファミリア設計者アントニオ・ガウディが言い残した言葉がしっくりくる。
「神は急いではいない」