ニッカウヰスキーのTwitter 公式アカウントで話題となった、ウイスキーを使って簡単本格レシピが楽しめるレシピ本があると、知り合いの編集部を通して小耳にはさんだ。しかも重版をするほど売れているようだ。何を隠そう、私は知る人ぞ知るウイスキー好きである。ファンの人からの差し入れは9割9分9厘お酒なので、イベント帰りはいつも腕が引きちぎれそうになっている。

この記事は、そんな酒好きのわたしが、家の更新により貸因に喘ぐ絶望から、この本に載っているレシピを参考に作った美味しいお料理とお酒によって立ち上がるまでの軌跡を描いた、ある日の日記である。

お酒を美味しく飲むためなら苦労を厭わない女

その日は朝から家の更新をするために管理会社まで行き、家賃2ヵ月分の更新料を払い、懐がすっからかんになって、家で絶望していた。

こんなときは、温泉かイケメンかお酒しか私のことを癒すことはできまい……。と、いつもの仕事帰りと同じことを考えていたが、いつもと違う点があったのだ。

それは『ニッカウヰスキーアレンジレシピ』の本が手中にあったことである。普段、ウイスキーはハイボールとして常飲水のように飲んでいるが、実はハイボール以外の用途でほとんど口にしたことが無かったのだ。ウイスキーではなくウヰスキーという表記なところもオシャレである。

わたしは2年前から一人暮らしを始め、唯一好きになれた家事が料理だった。実家にいるとき、キッチンは母の庭だったため、包丁さえほとんど握ったことがなく、アラサーを迎えても卵焼きくらいしか作ったことがなかった。

突然、一人暮らしを開始した私に、母は「卵をレンチンしたりして、アパートを大爆発させないか不安」「ガスコンロ消し忘れて家を燃やさないか不安」と、なぜか私が家を爆発させる危惧していた。

だがそんな心配はご無用で、とりあえずキッチンはIHだったし、わたしは段々と料理の腕を上げ、同僚や後輩の女の子たちにも料理を振る舞った。「美味しい美味しい」と食べてくれるので、どんどん調子に乗り料理を作りまくり、今では「寮母」と呼ばれるまでになったのだ。

寮母は、お酒を美味しく飲むためなら苦労を厭わない女であった。スーパーやコンビニのお惣菜も美味しいが、なるべく自炊をして、少し疲れた体に最高のお酒を流し込みたいという考えが常に脳内を占めている。

パラパラと本をめくり、お目当てのおつまみページへたどり着く。

全部美味しそうだし、全部作りたい…! と、手が包丁を握りエイトビートを刻みだしたのがわかった。

▲聖火バトンのように高々と掲げられたブラックニッカクリア

聖火バトンのように高々と掲げられたこちらが、本日の主役のブラックニッカクリアである。琥珀色に輝いていて神々しい。

クッキングペーパーがない…大ピンチ!

まず、わたしが選んだのは「豆腐のウイスキー味噌漬け」だ。

どのレシピにも共通して言えることだが、このレシピ本は圧倒的に使用する調味料が少ない。もしかすると、ウイスキーが全てをカバーしてくれる万能調味料なのかもしれない。

レシピを見たときに、調味料が多いとそれだけで疲れてしまうが、今はウキウキが止まらない。

いざ、レシピ通りに調味料を混ぜ、途中までレシピ本を読んだところで大事件に気づいた。

「クッキングペーパーで豆腐を包みます」

!!?

クッキングペーパーなるものはうちにはない。私がクッキングペーパーだと思っていたものはペーパータオルだった。くう、どうしたものかと辺りを見回すと、先ほど家の更新で管理会社からもらった粗品を発見した。

▲管理会社からもらった粗品

まさか……と思い箱を開けると中に……!

!!

▲多くの日用品のなかにクッキングペーパーが!

なんと、多くの日用品のなかに、クッキングペーパーが入っていたのだ! なんて偶然だ。今日、家の更新してよかった。

ウイスキーと砂糖の混ざった甘辛い香りのする味噌で、お豆腐をラップとクッキングペーパーで包み、しばらくのあいだ冷蔵庫という極寒の地で眠ってもらうことにした。

▲お豆腐をラップとクッキングペーパーで包む