『このまま君だけを奪い去りたい』『瞳そらさないで』などのヒット曲で知られるロックバンド、DEENのヴォーカリスト・池森秀一。近年は15年以上365日ほぼ毎日、蕎麦を食べ続ける蕎麦オタクとしてメディアでも広く知られる存在となっている。

そんな池森が、レシピ本『分とく山・野﨑洋光監修 DEEN池森の「創作」乾麺蕎麦レシピ』(小学館)を発表。日本を代表する料理人「分とく山」の野﨑洋光氏が監修し、家庭でも作れる蕎麦を紹介。「大葉のジェノベーゼそば」「舞茸と鶏肉のペペロンつけそば」など、魅力的なレシピが多数掲載されている。

▲『分とく山・野﨑洋光監修 DEEN池森の「創作」乾麺蕎麦レシピ』(小学館)

今回、池森本人に蕎麦を愛することになったキッカケから、レシピの意外な発想源、蕎麦と音楽の共通点。そして、ゆくゆくは「世界進出したい」と語る大きな野望までお聞きした。

蕎麦の乾麺のシェアが増えたのは池森のおかげ!?

――池森さんの蕎麦に対する愛は、今や多くの方々の知るところとなっていますが、レシピ本を出せるほどまでと聞くと、驚く方が多いのではないかと思います。

池森 前に『DEEN池森秀一の365日そば三昧』という本を出版させていただいて、そこで蕎麦愛を綴らせていただいたんですが、その後、小学館のDIMEさんから「レシピ本を出しませんか?」とお話をいただきまして、日本を代表する料理人「分とく山」の野﨑洋光さん監修のもと、出させていただいたという経緯ですね。

――蕎麦が好きということで、店舗のことは語れても、レシピ本まで出せる人はミュージシャンに限らずなかなかいないですよ、本当に池森さんの蕎麦愛が伝わってきます。

池森 ありがとうございます(笑)。

――しかも、レシピ本って再現するのにうまくいかなかったりもするんですが、麺もつゆも池森さんがプロデュースした「日本そば販売サイト」で買えるというのもいいなと思ったんです。ただお恥ずかしい話ですが、そばの乾麺ってこんなに種類があるんだ!? と、この本を読んで初めて知りました。

池森 そうおっしゃる方は多いですね。我々の仕事のスタート時間って、だいたい14時~15時からとかが多いんです。僕自身、『365日そば三昧』という本のタイトル通り、常日頃から蕎麦を食べているので、外で食べる以外は、家で自分で蕎麦を作って食べてから仕事に向かうんです。

そのときは当然のことながら乾麺から作るので、ただの習慣として捉えていたんですが、蕎麦好きで世の中に出ていくと、説明しなきゃいけないことが多いな、と感じました(笑)。皆さんが白米を食べるように、僕は蕎麦の乾麺を食べていて、お店に負けないだけのポテンシャルがあることを伝えたかったんです。

――その想いは伝わりました。

池森 これまではスーパーの売り場でも、うどんや素麺などの乾麺が占めていて、蕎麦がちょこっとだったのが、蕎麦の乾麺のシェアが増えてきたんです。じつは乾麺業界の方に「これだけ増えたのは池森さんのおかげです」って実際に言ってもらえて、『このまま君だけを奪い去りたい』を歌ったときくらいうれしかった!

――あはははは! それは相当ですね!!(笑)

池森 工場の方からも「池森さんは乾麺業界の花咲かじいさんです!」って言っていただけて、“うれしいけど、せめて花咲かおじさんにしてくれないかなあ”と思いました(笑)。

――(笑)。正直、蕎麦って、素麺とか冷麦とかもそうですけど、能動的に食べるもの、というよりか、“ほかにないから食べるもの”という感覚があったんです。この本のおかげで、いろいろなバリエーションを知ることができて、“これ作ってみたいな”と思うものばかりでした。

池森 そう言っていただけると本当にうれしいですね。

筋トレするも「DEEN、そんなに筋肉いらねえな」

――自分は池森さんと蕎麦の関係を知っているファンなのですが、この記事を読んでいる方のなかには、“え? あのDEENの人が蕎麦オタクなの?”って思ってる方もいると思うんです。申し訳ありませんが、今一度、池森さんと蕎麦との出会いを教えていただきたいのですが……。

池森 もちろんです。DEENが2008年に15周年を迎えるタイミングで、武道館公演、ツアーと計画して、アニバーサリーをいい状態で迎えたかったので、その前年からスポーツトレーナーの方に指導していただいて、すごく鍛えたんです。そしたら、ものの半年くらいですごい筋肉がついて、それでしばらく続けていたんですけど、最初は周りも「池森、いいね!」って言ってくれてたのが、その言葉を言われ続けるうちに、同じ言葉でも“池森、どこに向かってんの?”って言葉に脳内で勝手に変換しはじめちゃって。

ファンの方からも実際に「そんなに鍛えて、池森さんは何を目指してるんですか?」って声も出始めて、よくよく考えたら“DEEN、そんなに筋肉いらねえな”って気づいて(笑)。

――あははは(笑)。

池森 でも、その時点で6~7キロウエイトも増えていたんです。これを落とさないとな、と考えているときに、医学博士の石原結賽先生の本を読んで、プチ断食という健康法を知ったんです。

――プチ断食?

池森 はい、プチ断食というのは、朝は野菜ジュース、昼はそば、夜は何を食べてもいいよ、というスタイルで、それを試してみたら、1ヶ月で体重が元に戻って、それどころかすごく体調も良くなって、それを今までずっと続けてただけなんですよね。

――なんてことない、みたいな感じでサラッと仰ってますが、継続していることがすごいと思います。そして蕎麦に対しての知識を深めて、アレンジもしてみようという方向に向かうのも!

池森 どうやら自分がかなり変わってる、っていうのが皆さんに良い意味でバレたのは『マツコの知らない世界』がきっかけで、それがソロでテレビに出たのも初めてだったんです。そこからメディアに出始めたからこそ、“こんな蕎麦もあるんだな”とか“こんなの紹介したら面白いかな”って考え始めたし、自分のYouTubeチャンネルでも各地の蕎麦屋さん回ったりしてます。あれがなかったら未だに5種類くらいのそばを毎日食べてるだけの人だったと思うし、逆に蕎麦の奥深さをもっと知る良いキッカケになりましたね。