『カトープレジャーグループ』(以下、KPG)という会社名は聞いたことがなくても、『つるとんたん』という、うどん店をご存じの方は多いでしょう。『KPG』とは、『麺匠の心つくし つるとんたん』などの飲食事業、『箱根・翠松園』『熱海 ふふ』などのラグジュアリー旅館、沖縄でのホテル事業、劇場運営などのエンターテインメント事業、さらには公共のレジャー施設まで手掛けるカトープレジャーグループのことです。

加藤代表が先代から引き継ぎ洋装店からスタートした『KPG』は、幅広いジャンルで個性的な事業を展開。今や年商250億円、従業員数3100人の大企業へと成長を遂げました。今回は代表の加藤友康さんに、“唯一無二”のビジネスメソッドについて語っていただきました!

「自分はこうなりたい!」という思いや夢を言葉にする

フリーアナウンサー新保友映の「あの人に聞きたい!」 -加藤友康氏(第1回)-

新保アナ(以下、新保) 今日はよろしくお願いします。取材に先駆けて、先日、渋谷スクランブルスクエアの『ホセ・ルイス』で、素敵な時間を過ごさせていただきました。


加藤代表(以下、加藤) それはありがとうございます。お子さんはお幾つなんですか。

新保 いま6歳です。今年の4月に小学生になります。

加藤 一番かわいいときですね。

新保 『ホセ・ルイス』はラグジュアリーな空間でした。マドリードのスペイン料理店が日本に初上陸をしたお店とのことですが、子どもとふたりで行っても肩が凝ることもありませんでしたし、子どもも「すごくおいしい、おいしい」と何度も言っていました。スタッフの皆さんも優しくて、素敵な時間を過ごせました。

加藤 そうですか、良かったです。ありがとうございます。また、お越しくださいませ。

スペイン風オムレツ『スフレトルティージャ』は、ホセ・ルイスのスペシャリテともいえる逸品

新保 ありがとうございます。先程、スタッフの方のお話をしましたが、すべてのお客さまに対して細かいところまで気配りをされていました。加藤代表の著書『世界一楽しい仕事をしよう!KPG METHOD』を拝読しましたが、加藤代表のお言葉の中に、夢があると強く感じました。たとえば『ホセ・ルイス』のような素敵なレストランはお客さまにも夢を与えるし、おそらく一緒に働いていらっしゃる従業員の方にも、代表は夢を与えていらっしゃるのではと感じました。そこで最初に、加藤代表のビジネス上の信念からお伺いできたらと思います。

加藤 私のビジネスのルーツをたどりますと、私が22歳のときに父親が亡くなったのですが、KPGの前身となる会社を私が引き継いだのです。その当時は、まだ右も左も分からず手探り状態でした。22歳で社長というのは普通ではあり得ないケースなのですが、おかげさまでいろいろな方々に助けていただいて今に至るわけですが、就任から2年目ぐらいだったでしょうか。「どうなりたいか」という、自分の思いを言葉にしたのです。それは自著にも綴りましたが、具体的には「総合的なレジャー事業開発の実現を基幹コンセプトに、お客さまの喜びを第一に、時代のエポックとなる事業をプロデュースするサービスビジネスのプロ集団になる」という内容でした。平成どころか昭和の話でして、当時の会社の規模は現在の100分の1程度。「総合的なレジャー事業開発」などと伝えますと、「あんたうどん屋じゃないか!」って言われていました。それぐらい何もないときでした。

新保 金融機関の方の発言も辛らつですね。

加藤 それでも「こうなりたい」という自分の夢や思いを明快に伝えました。あともう1つ大切なのは、「自分の心がどうあるべきか」ということです。自分が何を思い、どういう人とお付き合いしたいか、どういう生き方をしていきたいかということも、一緒に言葉としてまとめました。特に大切にしたのは「真心ある人間」という言葉です。うそを言わないでちゃんと生きていく、義に徹する……ちょっと古い言葉かもしれませんが、父親が「義理人情」とよく口にしていた言葉です。人間の正しい道といいましょうか、やはりお世話になった方々に対して、きちんと恩に報いるように生きていきたかったのです。

新保 ある意味でいちばん難しい生き方かもしれませんが、何を得ることができましたか?

加藤 その当時、私の先生はお取引先の方々でした。納品先の方々と正直にお付き合いをすることで、のちのビジネス展開に役立つ、いろいろなことを教えてくださいました。おかげさまで自分が思い描く人生よりもどんどん夢が広がっていきまして、たくさんの目標を達成できました。一方で、「改革する心」もずっと忘れませんでした。「やりがいのある仕事」ですとか、「働きがいのある会社」という思いも書いてあるのですが、やはり「やりがいのある人生を送りたい」という考えが根底にありまして、事業継承から30年経ったいまでも、当時の思いはまったく変わっていません。