おはようございますこんにちはこんばんは、番組プロデューサーのTPこと高橋です。
「TPコーポレーション東京X」という変な名前の会社の社長をやらせてもらっています。弊社はテレビ番組制作業務も行っているんですが、先日「例えば炎」という芸人さんの特番収録を行いました。その収録がとても面白かったのはもちろん、訳あって彼らにかなり思い入れがあるため、今回は「例えば炎」について書きたいと思います。

例えば炎のタキノさんから「いい加減挨拶させてください」
例えば炎は、吉本興業所属、芸歴5年目の漫才コンビだ。TPコーポレーション東京Xが言うのもあれだけど、かなり変なコンビ名だと思う。変だけど一度聞いたら忘れない、素敵な名前。
昨年、自身初の「M-1グランプリ」準決勝進出を果たし、敗者復活戦で「タイムオーバー」となったことで人気に火がついた。コンビ名だけでなく、名の馳せ方も変だ。自分の子どもがタイムオーバーで有名になったら、少し嫌かもしれない。
僕は、2022年のM−1グランプリ3回戦の動画で初めて2人の漫才を観た。タキノさんが冒頭10秒、本当に訳のわからない言動をし続けた後に「今のは忘れてもらって」と言って、セルフリセットしてからネタを始めたのが衝撃的すぎたし、そのあとの本題の設定が、まさかの「コンビニ」というベタ中のベタだったのがさらに衝撃だった。そんな適当な火加減の漫才に一発で魅了され、事あるごとに彼らの魅力をSNSで発信していた。
この連載でも昨年のM-1準決勝前に名前を挙げている。「今年のM-1準決勝進出メンバーの中でも一際無名であろう2人」と、かなり失礼なことを書いているが、あの時点では本当にそうだったし、直接会ったこともなかった。
今年3月、大阪よしもと漫才劇場で彼らの初単独ライブ『ワレワレハタトエバホノオダ』が開催されると聞き、いてもたってもいられず、自腹でチケットを購入して現地まで観に行った。ジワジワ人気になりつつある、という話は聞いていたが、会場は超満員、そしてロビーには溢れんばかりの祝花が置かれていて、押しも押されもせぬ人気者になっていた。

単独ライブを観に行った旨をXに投稿すると、すぐタキノさんから連絡がきて、「いい加減挨拶させてください」と言われた。たしかに、直接会ったこともないのに「好き」と一方的に発信を続け、自腹でわざわざ大阪にまで観に行って挨拶もしないで帰る番組プロデューサーは、相当気味が悪かったんだと思う。逆の立場だったらブロックしているかもしれない。
もちろん、吉本興業のどなたかにお願いすれば招待で行けたかもしれないが、1回も仕事をしていない状況で、数少ない招待席を僕のお尻に使うのはかなりおこがましい。なので、本当に1ファンという立場で応援していたのだが、その人気っぷりを目の当たりにして、「これでようやく仕事ができる!」と思えたのが嬉しかった。
僕はずっと一緒に仕事をしたいと思っていたが、彼らが大阪にいることもあり、なかなか声をかけることができなかった。やはりどんな仕事であれ、面白いだけじゃ大人を説得できない。でもこれだけ人気があれば、テレビ局の偉い人たちへの説得材料となる。
ということで、僕はすでにずっと前から温めていた企画書に上の写真をつけて「こんなに人気なんですよ! 番組やりましょう!」とプレゼンした。上層部は『笑点』っぽいお笑いとか好きかなと思って「例えば炎だけに、人気に“火”がついてますよ」とうまいことも言ってみたけど、反応は弱火だった。プレゼン中に「今のは忘れてもらって」とセルフリセットした。
TBSの偉い人たちは、かなり優しいし仕事ができるので、そこから2人について入念に調べた結果「OK」を出してくれて、先日晴れて収録が行えたというわけだ。本当にありがたい。