一生懸命書いたのに切られるショック
連載のお話をいただいたときはびっくりした。書籍化まで決まり本当に感謝している。
きっかけはある雑誌の取材だった。「自伝を書きたいと思ってるんです」と軽い気持ちで言ったところ、媒体を探して本格的に企画を進めてくれた。
俺なんかが自伝を書いても、誰が読んでくれるんだろうという思いもあったが、それ以上にものを書くという仕事が初めてだったから、とにかくうれしかった。
しかし、書き始めてすぐに壁にぶつかる。書くという作業がこんなにしんどいとは思わなかったし、何度も途中で心が折れそうになった。自分から言い出したことだけど、締め切り前、バイトや仕事の合間に原稿に向かい合うときはため息が出た。
毎週のように、次のテーマの打ち合わせ。エピソードが決まったら書き始めるのだが、どこまで話題を広げるべきか、どこまで掘り下げるのか、そもそもこの話は面白いのか、苦悩の日々が始まる。自伝だから回顧シーンが多く、第三者の心情を考えながら書くのが特に難しかった。
最初に送った原稿には、いくつもの指摘が入っていた。
「いつ頃の話か時系列をわかりやすく」
「ここのシーンはもっと細かく描写してください」
「この時はどんな気持ちだったんですか?」
などなどいろいろな指摘が書いてあった。その一つ一つを見て、なるほどと思った。俺はこんな大事なことをサラッと書いていたのか、ということに気づかされたし、文章というのは丁寧に書かないと、自分の思っていることは伝わらないのだと知った。逆に一生懸命書いたところがバッサリ切られてるときはショックだった(笑)。
昔を思い出しながら書く作業は、だんだん楽しくなっていった。幼少期から思い出して書き進めていたのだが、忘れてることもたくさんあったし、書きながら思い出すこともあった。原稿を送ってから、あの話を書き忘れてたなぁと思うこともあった。