我が子はどう育てる!?

――入江さんはデビュー15周年、市川さんは舞台初日が15年の節目だそうですね。

入江 いいのか、悪いのかわからないですけど、あっという間でした。

市川 僕も15年と聞いて、そんなに経つんだという思いです。振り返れば、いろいろありましたけど。15年もできたなんて、幸せなことです。

入江 一つの物事を15年続けられるって当たり前のようで、なかなかないことですから。僕は30歳になって、これからが楽しみです。ため込んできている自覚はありますから。20代後半って、学生でもないし、社会人だと新入社員ぐらいって決められてしまって、なかなか役柄的に難しい。噂ではここから役の幅が増えていくと聞いています。わからないですけど(笑)

市川 そうなの? 僕は30歳に入ると一回、役が減ると聞いていたんです。でも、実際には減っていないから、もしかしたら増えるほうが正解なのもしれないね。

入江 どう見えるかだから、演じるうえでは実年齢は関係ないのになぁって、勝手に思ってしまいますけどね(笑)

市川 年齢を公表していない人もいるよね。今日から隠そうかな(笑)

入江 えっ、いまさら?(笑)

――30歳となると、家族について、考えることも増えると思いますが、この作品を機に自分の理想の家族など、考えたりしますか。

市川 仲良くしていたいですね。干渉しちゃいそうだけど、あまりに干渉しすぎるのはよくないかなとも思います。自分が自由にさせてもらったから、子どもにもそうしたいかな。最近は迷惑動画を公表したりする子どもがいるじゃないですか。自分の子どもがああいう子になってしまったらどうしようとか、考えてしまいます。賠償金とか、払えなさそうだしなぁ。

入江 ああいう子どもこそ、愛が必要なのかもしれない。満たされていたら、そんなことしないんじゃないかなと思う。

市川 これまでは他人事だったんですけど、今後、自分が親になったときに可能性はなくはない。そうならないように教育はちゃんとしなくちゃと思い始めました。正解はないから、自分なりに精一杯、向き合える親になりたいと思います。以前、事務所の若手俳優の企画で、“いい夫診断”的なことをやったとき、僕、90点で一位だったんですよね。

入江 それは間違っているね(笑)。決して、冷めているわけでも、愛情がないわけじゃないけど、家族を俯瞰で見ていそう。

市川 わりとドライになるかもしれない。

入江 僕はどちらかというと、手をかけたいと思うほうなので、また違ったタイプの愛情を注ぐ親になるんじゃないかなと思いますね。お互いの家族で一緒にパーティーとかする?

市川 交流するか(笑)。

入江 僕は今回の台本を読んで、家族への愛や感謝の気持ちは言葉にしないと、伝えていないのと一緒だなと思ったんです。家族って、いて当たり前のように思っているけれど、いついなくなって、消えてしまうかもわからないのが現実。特に僕は今、30代に入り、そういう時期に来たのだと思います。

だから、日頃から感謝することを恥ずかしがったり、先送りにしたりせず、親や弟に対して、思っていることを思った瞬間に言葉にして、伝えなくてはいけないなと。親を悲しませたくないとか、自分の家族が背景に思い浮かべば、他人に迷惑をかけるような行動ってしないんじゃないかなって思うんです。僕の役もそう。家族のこと、両親のことを考えられなかったから、悲しませてしまった。

自分が親になった場合も、与えてあげている感覚でいたら、それはただのエゴで、子どもに対して、何も伝わらないと思う。子どもができたら、子どもが何に悩んでいるのか、ちゃんと向き合って育てていきたい。子どもを育て終わっても、役目が終わったわけではなく、一人の男として、奥さんに寄り添い続けたい。

夫婦の間柄って、ずっと恋愛ではない。それでも愛はある。その伝え方を、年齢を重ねるごと、10年20年経つごとに徐々に変えていって、そういったものが欠落しない家庭を築いていきたいと思いました。僕の父は“俺が言ったことが正しい!”みたいな人で、僕ら兄弟には「飯を食いながら、テレビを見るな」と言っておきながら、自分は見ているような人だったので、反面教師になっています(笑)。

子どもを疑心暗鬼にさせたくないので、親になっても自分が悪いと思ったら、素直に謝りたい。ちゃんと「ごめんなさい」って言える親になりたいです。子どもに“こういう親父になりたい”って思われるのが憧れ。考えてやるとダメなので、子どもたちが“こういう家庭を作りたい”って自然と思うような家庭を作っていきたいです。

市川 子どもをすごく愛しそう。ハグとか頻繁にしそう。

入江 する、する。今回の舞台はオーストラリアの話なので、ト書きの要所要所にハグやキスをするって書いてあるんです。僕自身、実家に帰ったら「ただいま」って、すぐハグしますね。

市川 僕はしないなぁ。恥ずかしい。

入江 魔法みたいなものです。喧嘩したとしても、ハグをするというルールを作っておいたら、謝りやすいと思うよ。

▲(左)市川知宏/(右)入江甚儀 撮影 : 浦田大作

――二人の仲も15年だそうですね。相手の変化は感じていますか。

市川 稽古中、演出家さんとやりとりしている姿を見て「15年、やってきているんだな」って頼もしく感じました。昔は当然、お互い子どもだったのですが、今回の演出家さんも同じくらいの世代で、対等に話しているのを見ていて“そうだ、もう30代だもんな“と思いました。ずっと定期的に会っているので、劇的な変化は感じないですけど、ふとした瞬間にお互い、大人になったなと感じます。

入江 市川くんが一番よくわかっていると思うけど、僕が知っている役者のなかで、お芝居や演技に対する姿勢が誰よりもすごく変わったのが市川くんだと思っています。事務所に入ったキッカケはお芝居ではなかったけど、次第に自覚を持ってやるようになった。この15年間で始めた地点からのギャップが誰よりも違うのが市川くんだと思う。

僕は、もともと俳優をやりたいと思って事務所に入ったのですが、彼の場合、演技をする、人に伝えるのが仕事だっていう自覚がある時点で芽生えて、その姿勢は近くから見ていて“僕ももっと頑張らなきゃ”と大いに刺激になります。それは15年前には、お互いになかった感情だと思います。

――最後に今後の目標を教えてください。

市川 パイロットになりたかったので、パイロット役をやりたいとか、ジャンルで言えば、不倫系のドロドロした恋愛ものをやりたいとか、細かい望みはいろいろあるんですけど、何よりもっとたくさんの役をやりたいです。贅沢なことだと思いますが、いろんな役者さんと、いろんな監督と一緒にいろんな作品に参加したい。それが今の目標です。

入江 先日、家族と集まったのですが、おばあちゃんが朝ドラを見るのが楽しみらしいんです。やっぱり全国放送の力ってすごいんだなと改めて思いました。いい作品に出て、いい芝居をしても、見てもらわなければ悲しいことに“なかったもの”と同じにされてしまう。

いい作品をより多くの人に届けられるような存在になりたい。そのためには自分がもっと影響力を持てるようにならなければなりません。だから、朝ドラに出るというのが今の目標です。


舞台『これだけはわかっている ~Things I know to be true~』
作/アンドリュー・ボヴェル 翻訳/広田敦郎、演出/荒井遼
出演/南果歩、栗原英雄、山下リオ、市川知宏、入江甚儀、山口まゆ
2023年6月30日~7月9日
東京芸術劇場シアターウエスト
プロフィール
 
(左)入江 甚儀/(右)市川 知宏
入江 甚儀(いりえ・じんぎ)
1993年5月18日生まれ、千葉県出身。身長183センチ。趣味は音楽鑑賞、絵を描くこと。ドラマ『絶対彼氏~完全無欠の恋人ロボット~』でデビュー。主演ドラマ『金魚倶楽部』のほか、大河ドラマ『軍師官兵衛』『麒麟がくる』、日曜劇場『半沢直樹』など。最新作にNETFLIXシリーズ『THE DAYS』、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』などがある。10月14~15日に開催する舞台『あの夜であえたら』では構成作家・神田龍二役で出演する。Twitter : @jingi_irie、Instagram : @jingi_irie

市川 知宏(いちかわ・ともひろ)
1991年9月6日生まれ、東京都出身。身長185センチ。趣味はボウリング、麻雀。第21回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』グランプリ受賞を経て、ドラマ『カイドク~都市伝説の暗号ミステリー~』で俳優デビュー。主演ドラマ『クローン ベイビー』のほか、『仮面ライダーセイバー』など話題作に出演。近作に映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』、ドラマ『僕らの食卓』『勝利の方程式』など。Twitter : @ichitomo96、Instagram : @tomohiro_ichikawa_official