ミュージカル界を牽引する人気スターの浦井健治が、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』で三度目の主演! 2006年の初演時には第31回菊田一夫演劇賞を、そして2014年の再演では第22回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した代表作を前に意気込む彼に、作品に寄せる想いをインタビュー。

また、3月15日にはニューアルバム『VARIOUS』もリリース。5月からは東京や大阪でのツアーも決まっている。この春、ますます勢力的な彼の活動に注目だ!

『アルジャーノン』のチャーリイは浦井健治で!

――まずは『アルジャーノンに花束を』について聞かせてください。三度目となる主演のお話があったときは、どんな感想を抱かれましたか?

浦井 とてもうれしく思いました。矢田悠祐くん主演の上演も含めると、このミュージカルでは5回目。まさか、またやれるとは思ってもいませんでしたが、今回さまざまな想いやタイミングが重なって、また挑戦させていただくことになりました。

――二度の演劇賞を受賞したこの作品、ご自身にとってはどんな位置にある作品なのでしょうか。

浦井 初めて主演をさせていただいた作品かつ、原作はありつつもオリジナルのミュージカルを作ることの素晴らしさを感じたことはとても有意義で。すべての経験が、今の僕にとって素敵な財産となっています。僕の役者としてのバイブルです。

作曲家や演出家と一緒に「こんな曲ができあがったね」と言いながら、一つひとつのミュージカルナンバーを作っていく。そして、それが作品として仕上がっていくまでの過程を経験できる、というのは難しさもありますけど、オリジナルミュージカルを作る醍醐味だなと思います。

熱気を帯びたあの経験は自分にとってすごくプラスでしたし、今でも自分の中にしっかり残っています。それがいい形で評価されて、上演を繰り返す状況になっているのもありがたいです。

 

――さらに経験を積んだ今、原点というべき作品を上演することでどんな結果になりそうですか?

浦井 まず、今回から演出家がこれまでのオリジナル演出の荻田浩一さんから上島雪夫さんに変わるので、荻田さんとの初演、再演をちゃんとリスペクトしながらになります。もちろん、体で覚えていることもたくさんあるので、それも上島さんにちゃんとお伝えしながら、2023年バージョンを作っていきたいですね。

キャストも初演、再演のときとは違うので、このカンパニーならではの『アルジャーノン』を、今の時代に合わせたものとして、みんなで意見を出し合って創作していきたいです。その素敵さをきっと体験できるんじゃないかと楽しみにしています。

――同じ役柄ではあるけれども、新しい挑戦になるんですね

浦井 はい。もちろん初演、再演、そして矢田くんの上演バージョンをリスペクトしつつ、自分の中にも投影できるようにやっていこうとは思っているんですが、キニアン先生もストラウス博士もキャストが変わるので、もうそこで作品は別のものになると思います。よりよいブラッシュアップをみんなでしていけたらと思います。

――キャストが変わるとすべて変わるというのは、きっと人間が描かれている作品だからかと思います。普及の名作である同名SF小説を原作にした今回のミュージカルは、幼児並みの知能しかない32歳のチャーリイが脳手術で知性を獲得していくというストーリーです。浦井さんがこの作品の主人公・チャーリイを演じるうえで、大事にしていることはなんでしょうか?

浦井 普通であること、そしてピュアであることです。周りの人たちはチャーリイに影響を受けて変わっていくさまが描かれているので。チャーリイ・ゴードンの真っ直ぐさ……誰かと友達になりたい、誰かと一緒に生きていきたいという想いを大切に、念頭に置いてやっていけたらなと思います。

――改めて、どんな想いを持って上演に臨みたいですか?

浦井 この作品には、個人的な想いがありまして。初演と再演でアルジャーノンを演じたのが森新吾だったんです。彼は亡くなってしまったのですが、彼の面影を確実に僕は見ることになると思います。新吾が「チャーリイは僕の中では健治」と言ってくれた言葉が当時のパンフレットに残っていて、そういうことも自分にはすごく大きくて。だから、また舞台の上で新吾に会えるんじゃないかなという気持ちがあります。