2023年1月8日から放送中の日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)。バカリズムが脚本を手がける本作は、ある日、不慮の死を遂げた主人公・麻美(安藤サクラ)が、さらなる徳を積むため人生をやり直すといった、タイムリープ系ヒューマンコメディとなっている。
このドラマで、成人式に出席した20歳の麻美が友人たちとカラオケに行くシーンで、一際目を引くキャラクターがいた。それは、麻美がかつて密かに思いを寄せていた初恋相手・加藤だ。中学時代から一変した風貌で、レミオロメン「粉雪」を大熱唱するその姿は、放送終了後SNS上で大きな話題となり「一度見たら忘れられない」「毎週『加藤の粉雪』を心待ちにしている自分がいる」などの声が上がっている。
今回は、そんな加藤役を演じる俳優・宮下雄也を直撃インタビュー。すると彼自身も、加藤に負けず劣らない“濃すぎるキャラ”を持つことが明らかになった。
加藤の髪型は偶然の産物!?
――「加藤の粉雪」への大きな反響を受けて、いかがですか。
宮下雄也(以下、宮下) 他現場の共演者やスタッフさんから「見たよ」と声をかけられたり、今まで経験したことのないほど反響が大きくて、信じられない気持ちになっています。一番ビックリしたのは、親から連絡があったことですね。うちの親には『ブラッシュアップライフ』出演について伝えてなかったんですけど、たまたまテレビを見ていたら僕が映っているのを見つけたみたいで「めっちゃ歌ってたやん」って(笑)。
――加藤が登場しない回でも、放送後は「今週『加藤の粉雪』無かった」と、不在を惜しむ声が上がっていますね。
宮下 ありがたいです。いい意味でインパクトが強ければうれしいんですが……エゴサしていると「加藤が夢に出てきた」というコメントもあったので、悪夢じゃないといいなと(笑)。
――宮下さんは演劇界で“性格俳優”として知られる存在ですし、吉本興業のアイドルグループ「RUN&GUN」としてデビューしている経緯があるだけに、強いインパクトや歌唱力を伝える加藤役には、宮下さん自身の魅力がギュッと濃縮されているように思います。
宮下 でも僕、じつは歌うの苦手なんですよ。「RUN&GUN」にいたときも、歌が下手すぎて、ライブ中にマイクのスイッチをオフにされていたくらいですから。「加藤の粉雪」シーンでは、編集で調整していただいて上手に聴こえているかもしれないですけど。そのくせ歌うことは大好きだし、下手なのに声量だけは人一倍あるので、安藤サクラさんに「めちゃくちゃ声出るじゃん!」って驚かれました。
監督もまた、乗せるのが上手なんですよ。「もっと浸って!」「自分だけの世界にしちゃって!」と声をかけてくださって。そういう演出のおかげもあって「加藤の粉雪」は完成したんです。
――加藤の役作りは、どのように行ったんですか。
宮下 役作りについては、周りの方々からの助言も大きかったですね。撮影前の衣装合わせをしたときに、プロデューサーから「宮下さんの髪型って“いつの時代に流行ったの?”って感じでいいね。それでいきましょう」と言われて。
――あの個性的な髪型って、宮下さんの髪型そのままだったんですね。
宮下 そうなんですよ。その時期、普段通っている美容院に行こうとしたら予約が取れず、代わりに商店街の怪しい床屋さんに行ったら、こんな髪型になっちゃったんです。箱から出したばっかりの雛人形みたいな…(笑)。
でも、この髪型のおかげで加藤の個性がさらに強まったので、その床屋さんには結果的に感謝してます。
――撮影現場で印象的だった出来事はありますか?
宮下 『ブラッシュアップライフ』には、たまごっちやガラケーの光るアンテナなど懐かしいアイテムがいっぱい登場しますし、キャスト陣も同世代が多いので、撮影中は「この時代に何が流行っていたか」みたいな話で盛り上がっていました。
あと、ドラマの現場に慣れてないこともあって、最初はかなり緊張してしまっていたのですが、そんななか野呂佳代さんが真っ先に話しかけてくださって。「あの、いきなりなんですけど……ぽっちゃりしてて得したことってあります?」と聞かれたので、「いやー、なんですかね…?」って答えたら、「ね、私もぽっちゃりしてるけど、得したこと無いんですよ」と。その後、二人で話し合って導き出したのが「ぽっちゃりだと、少量のお湯でも湯船が満タンになるからうれしいよね」という結論でした(笑)。
――和やかな現場の雰囲気が伝わってきます。「人生をやり直す」ことがひとつのテーマとなっている本作ですが、宮下さんご自身も「あのとき、こうすればよかった」という人生のターニングポイントはありますか?
宮下 めっちゃあります。細かいところでいうと、もしも中学生の頃に戻れるとしたらバスケ部に入らず、帰宅部になる道を選びますね。世代なので『スラムダンク』に憧れてバスケ部に入ったんですけど、そもそも運動が嫌いだから走っていても何も楽しくないし、シュートが入ってもそんなにピンと来ないんですよ。体育会系ではなく、むしろインドア派なので。
そんな感じで3年間ダラダラと所属しちゃってたので、そんなんだったら帰宅部でいっぱいマンガ読んだりゲームやったりしたかったなって、後悔してます。
――運動が苦手だったんですね。アイドル時代、ダンスはすぐに習得できたのですか。
宮下 いや、練習中はダンスの先生にすごい怒られてましたよ。そもそもアイドルになったのも、親が勝手にオーディションに応募してっていうパターンだったので……。全然自分の意志じゃないところで話が進んでいって、デビュー準備することが決まって、大阪から上京して。けっこうキツかったですね。
――それでも芸能活動を続けていけたのは、なぜだったんでしょう。
宮下 やっぱり舞台に立ったときの喜びは、何にも代え難くて。「またカーテンコールの拍手を浴びたい」と思えたのが、演技について学ぶ原動力になったというか。