ギャルマインドを社会に落とし込みたい

――ともちんぱさんは本当に好きなことをやっている感じですよね。これまで転機となった出来事はありますか?

ともちんぱ:三浦春馬さんが主演の『キンキーブーツ』というミュージカルがあって、それを見に行ったんですよ。もともとミュージカル鑑賞やライブが大好きで、よく行っていたんですけど、それを見たときに初めて雷に打たれてしまって。

ドラァグクイーンがテーマのミュージカルだったんですけど、言葉遣いがめっちゃ独特で面白かったんですよ。そこで私もドラァグクイーンになりたいと思ったんですけど、それは男性がやるから説得力が生まれるんですよね。そこで私が目指すべき仕事は“これだな”とビビッときまして、いろいろ考えたときに“これはギャルかもしれない”と思ったんです。

――そこが今のギャルスタイルの原点なんですね。それ以前はまったくギャルには触れてこなかったんですよね?

ともちんぱ:そうなんですよ~。触れてないし、興味もなかったです。唐突に思っただけで、まずはその世界を知ることから始めようと、そう思ってめちゃくちゃリサーチをしたんです。それで調べていたときに、「Black Diamond」っていうギャルサーのオーディションがあったので受けてみたら合格して、そこでしばらく活動していたんですけど、ステージに立つだけじゃなく、タレント活動もしなくちゃいけなかったんで、そうなるとなかなか自分の言いたいことが言えないことがあって。

そこで“やっぱり自分は言葉で表現をしたいんだ!”と気づいたんですよね。ドラァグクイーンみたいに面白くて魅力ある言葉で伝えるにはどうすればいいんだろう……って考えたとき、ビジネスシーンにギャルマインドを落とし込めばいいじゃん!って思いついちゃって。

――どのようにギャルマインドを学ばれたんですか?

ともちんぱ:もっとディープなギャルたちに会って触れ合わなきゃと思って、アイドルグループをやめて、渋谷にあるギャルカフェで働き始めたんです。面接をしてくれたのが黒ギャルの店長だったんですけど、今まで会ったことのない本物のギャルすぎてビックリして(笑)。

ここならギャルマインドが得られるかもって思って、4年ぐらい働きながらギャルのボキャブラリーやマインドを勉強させてもらいました。そうしたら同じ思考を持った「ギャル式ブレスト」の今の総長のバブリーという子が来てくれて、「ギャルマインドを社会に落とし込みたい」って話をしてくるんですよ。“私と同じ人いるんだ!”ってバイブスがアガがって意気投合して、一緒にビジネスをやることになりました。

企業にギャルを送り込んで忖度のない会議にする

――ギャル式ブレストはどんな取り組みなんですか?

ともちんぱ:簡単に言うと、「直感力」「ポジティブ思考」「自分軸」の3つをギャルマインドとして唱えて、主にビジネス社会でのコミュニケーション課題の解決に取り組んでいます!

私はギャルチームのリーダーをやっていて、自分を生かしたいけど、どうやればいいかわからないギャルたちを育てつつ、そういったギャルマインドを持っているギャルたちを全国からピックアップしてきて、企業に送り込んで忖度のない会議を作ったりもしています。社会に出ると、どうしても忖度しちゃいがちじゃないですか。

私はその空気感を変えていきたいと思っていて、それが私たちの着地なんですよ。よく勘違いされるのが「何か会議をして新しい商品を作るんですか?」「新しい部署を作るんですか?」って聞かれるんですけど、そうじゃなくて「社会に出て頭が固くなったビジネスパーソンの思考をもみほぐして、あなたの本来の力を呼び起こすぞ!ってのが目的なんです」って説明してます。

▲「あんたはもっとすごいんだよ」って伝えてます

――ある意味、それは社会問題を解決したいみたいな思いでもあるんですか?

ともちんぱ:社会の課題というよりは、私は誰かのスイッチを押したいだけなんですよね。「あんたはもっとすごいんだよ、取り戻しなよ」みたいな。もちろん、企業が求めていることによってアプローチの仕方は変えることもあるけど、最終着地はそこにあります。

――ちなみに、企業からは具体的にどういう形で依頼されることが多いんですか?

ともちんぱ:もう全部バラバラですね。車の会社だったら車に関するブレストをしますし、鉛筆の会社だったら、“書くとはどういうことか?”から始めて、書く未来ってなんだろうみたいなところまで、脳みそを柔らかくして考えていく感じです。

例えば、墓に落書きして盛れる墓を作りたいけど、墓に普通のペンで書いたら消えちゃいますよね。だから墓に書いても消えないペンを作りたい。現実味は帯びていないけど、それでいいんですよ。マジレスじゃなくていいから、どんどんアイデア出してこ!ってことを意識してもらうようにしています。