家族で「起業」という新たなチャレンジ

一年前の取材では「ある場所に拠点を構え活動していく予定」と、クリエイターとしての今後の活動について抱負を聞かせてくれていたが(WANI BOOKOUT参照)、ついに今年3月、名古屋でオリジナル印刷スペース『さぽ助』を開店した。ながらくフリーターとして働いてきた同氏が、家族との“起業”へとたどり着いた経緯について、くわしく話してもらった。

「高校を卒業してから15回ものアルバイトを転々としてきましたが、この活動がきっかけで出会った夫と結婚し、その夫の勧めでイラストを描き始めたり、やがてイベント出店してみたり……。

そういったことを繰り返していくうちに、福井で会社を経営している義理の父からの提案で“名古屋で事務所を立ち上げたいから、好きなことやりたいならなんかやる?”と言った話が出ました。

もともと独立することに意欲のあった夫と、長く続いてきたゆとりフリーター活動のなかで、そろそろ新しいことに挑戦してみたいと私が思っていたタイミングが合ったので、本腰を入れて実店舗の話が進みました。

業種については、自身のイラストレーターの活動や、夫のデザイナー経験を掛け合わせて考えた結果、もともと印刷の機械に強い福井の会社の力を借りて、“多くのクリエイターが、ものづくりを日常的に行える場所をつくりたい”という想いから、オリジナル印刷ワークスペースというお店に決まりました。

自分で印刷機械を使ってオリジナルグッズを作りたいという方はもちろん、データ作りや創作のアイディアが苦手という方にも、ものづくりの楽しさを知ってもらうためのサポートができるよう『さぽ助』としました。

クリエイターと名乗るのはまだ気恥ずかしいという“たまご”の方も、オリジナルグッズを作って誰かにプレゼントしたいという方も、『さぽ助』では歓迎しています。今後も、かつて私自身が創作を通じて悩んできたことを解消できる仕組みを計画中です」

▲2024年3月から始めたものづくりをサポートする『さぽ助』 写真:店舗提供

これまでのきわめて匿名性の強い活動から、一気に地域に根ざした活動へ――。新しく立ち上げた「さぽ助」では、いったいどのような取り組みを行っているのか、さらに、くわしく聞いた。

「『さぽ助』ではお客様の目的によって大きく3パターンのご利用方法があります。

  1. 自分で作りたい
  2. 印刷を依頼したい
  3. ワークショップに参加したい

いずれかによって、アクリルグッズ、Tシャツやトートバッグなどの布物、ステッカーやシールなど印刷できるものなら、なんでも作ることができます。

グッズ作りに興味があるけど、データ作りが難しそうという方には、一生もののスキルが身に付くオプションも用意しています! 初めての方から、すでにクリエイターの方まで、さまざまな方の力になれるよう、サポートしていきたいと考えています。

自分自身の変化としては、以前、匿名で活動していた理由のひとつとして“バイト先に迷惑をかけていけない”があったのですが、今はむしろ知られていかないといけない立場にあるので、ようやく真っ向から挑み始めたな……という気持ちに変わりました」

▲ステッカーやシール印刷などもできる 写真:店舗提供

銀シャリ・橋本さんとのお仕事で感じた喜び

『さぽ助』では所属クリエイターとしても活躍中。書籍出版、そして事業立ち上げという大きな転換期を迎え、今後、どのような未来を見据えているのか、あらためて“クリエイター”としての展望を聞かせてもらった。

「今後、クリエイターの第三の居場所として、あそこ(さぽ助)に行くと、“なんかモチベ上がる”“家よりも作業がはかどる”“こんなこともできるかもしれない!”と思ってもらえることを目指しています。

クリエイターを目指されていない方でも、足を踏み入れたら創作スイッチが入るような刺激を与えられたらうれしいです。

さぽ助所属クリエイターとしては、さぽ助看板のシロクマのキャラクターがいるのですが、さぽ助くんが独り歩きするくらい可愛いグッズを作りたいですね! フリーペーパーで『クリエイタータイプ診断』というのも作っていて、どんどんお店の盛り上げに貢献していきたいです」

▲さぽ助の看板・シロクマ 写真:店舗提供

「最近では、『しゃぶ葉』さんで最新フェアのしゃぶしゃぶを食べて感想を話す、プロの方からコーチングをしてもらう、などの“体験”をポッドキャストで発信させてもらえることが、自分の理想形に近かったことに気がつきました。“自分の体験がコンテンツになっていること”に喜びを感じています。

一方で、派手ではない日常のなかにも、毎日、何かしらは感じて生きているので、その感覚をポッドキャストやイラストや文章、あらゆる手段で表現し共感を得たいという願望もずっとあります(笑)。

ポッドキャストからのご縁で、銀シャリ・橋本さん(吉本興業所属の芸人)の単独ライブのポスターイラストを描かせていただいたときも、得難い喜びがありました。

心の底からライブの大盛況を祈って取り組んだなかで、初めての感情も芽生え、誰かの活躍を応援するための手段としても、これからもイラストをたくさん描いていきたいです。

このような活動を今のまま続けたら、いったいどんなことが起きるかな~? と楽しみながら『ゆとりフリーター』は今後も続けていくと思います! ただ、総務省統計局によると、フリーターと呼べる年齢は34歳までとされているようなので、34歳あたりにはまた何か変化を起こすのかな? とも思っています(笑)」

▲『さぽ助』で作れるもののサンプルコーナーもある 写真:店舗提供

最後に、『さぽ助』の近々のスケジュールと、ポッドキャスト番組のリスナー、ファンへ向けてのメッセージをもらった。

「5月12日(日)まで、さぽ助『母の日ラッピングフェア』を開催しています。1320円(税込)で60分間、店内にある11種のラッピング材料使い放題&ハンカチ印刷1枚サービスします! ご来店予約など詳しくは、さぽ助Instagramをご覧ください! お店のイベントイラストは全てゆとりフリーター描きおろしでグッズ販売もありますよ。

また、店内の見学は無料ですので、気になる方はぜひお気軽にお立ち寄りください。さらにGW中の5月5日(日)に一夜限定で『ゆとバズファンミ』を行います。ゆとバズのリスナーである、ゆっ友向けのイベントとなっていますので、気になる方はゆとりフリーターSNSでチェックしてください。

そして、ファンの皆さま、いつもありがとうございます! 今後もマイペースに見守っていただけたら、これ以上うれしいことはありません! 思い出したときに帰ってこられる“お耳の居場所”をこれからも守っていきたいと思っています。

付きっきりで聴いてくれているリスナーの方は、番組のネタ切れ防止とローテンション予防に適度にお便りください(笑)」


プロフィール
ゆとりフリーター
1995年生まれ。高校卒業後、飲食や販売など接客業を中心に、住み込み農家からスポーツクラブ、バーテンダー、トイレ掃除などアルバイトを転々とした経歴を持つ。2016年、実家の押し入れから音声配信活動を開始。現在は、音声配信・制作を中心にイラスト制作、コラム執筆など、ポッドキャストに留まらないゆとり”クリエイター”として活動中。JAPAN PODCAST AWARDS 2020ベストパーソナリティ賞ノミネート。Radiotalk番組:『ゆとりは笑ってバズりたい』、X(旧Twitter):@yutori_radio_、Instagram:@yutori_radio、さぽ助Instagram:@saposuke_print