憧れの綾小路きみまろさんは年下!

孫ほど年が離れた芸人たちと関わるきっかけを作ってくれたのも、山田氏だという。

「NSCを卒業するちょっと前に山田さんの紹介で、素敵じゃないか(当時はバニラボックス)さんの単独ライブの幕間のVTRに出演させていただいたんです。

公園で撮影したんですけど、お昼過ぎにお二人が“おばあちゃん、お腹空いてる?”って聞いてくれたから、どんなロケ弁が出てくるんだろう?ってワクワクしちゃって。だけど、“お腹空いたらいつでも言って! カップラーメン買ってきて、お湯ももらってくるから”って言われたんですよ(笑)。

そのときは“大丈夫です”と言ったんですけど、こういう優しさがあるんだなって、今までテレビで見てた芸人さんとは違う人間像というか、温かさを感じました」

今ではすっかり劇場の仲間とも打ち解けたおばあちゃん。

「年寄りって嫌われると思ってたんですよ。でも、皆さん本当に温かく接してくださって、ありがたいです。先日も楽屋で“おばあちゃんバズってたね!”って言われて、なんのことかわかんなかったんですけど、どうやら狛犬の櫛野さんに言われるがまま撮った写真がバズっていた?  みたいで。

あと、“若い人にはがんばってほしいんだよ”なんて楽屋で話してたら、“おばあちゃんを除いてまだみんな若いよ”って(笑)。皆さんプロだから、そうやって一つひとつ全部のことを笑いにしてくれる。本当に温かい方々ばかりです」

この一年、たくさんの人と関わったおばあちゃんに、一緒に仕事してみたい人を聞いた。

「綾小路きみまろさんです。でも、きみまろさんは私より年下なんですけどね」

77歳になった現在も新たな発見ばかりだというおばあちゃん。人生で大切にしていることを聞いた。

「ものを無駄にしないことです。戦後で食べるものがなかった時代を経験してますから、特に食べ物を無駄にしないというのは大切にしています。すぐに使うものだったら、手前においてあるものから買いますし」

自分のやりたいようにやればいい

おばちゃんは現在、まだ女性の地位が低かった時代のなかで、初めて法曹の世界に飛び込んだ一人の女性を主人公に描いた、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)に夢中になっていると教えてくれた。

なにかをしようと思ったとき、女の子はしなくていいって押さえられてしまう時代だったんです。私も子どものときから大学に行きたいと思っていたんですけど、女の子は学校に行かなくていい、洋裁・和裁をやりなさいって。

そうやって押さえられた人生だったから、やりたいことをあんまり口にしたらいけないんだ、というのは心の中にずっとありました。私が働き始めたときも、近いものがまだまだ残っていましたからね。だから“わかる! わかる!”って言いながら見ています(笑)」

また、そんな時代を生きるなかで学んだことも教えてくれた。

「物事はなんでも楽しんでやることが大切。昔は女だからって給料も安かったし、何かするって言うと“女だからダメ”って言われたんですよ。ふんぞり返る男の人に一生懸命、お茶を運ばないといけない。

ふざけなさんな!って思っていたけど、それも楽しんでやればいい。結局、誰かがやらないといけない仕事なんだから、この人は苦いのが好きだなとか、この人は薄いのが好きだ、この人は猫舌だから気をつけよう……そう覚えるだけでも楽しいじゃないですか。イヤイヤやってたら何も続かないでしょう?」

▲物事はなんでも楽しんでやることが大切です

これまでさまざまな経験をし、今ではお笑い芸人という新たな挑戦を続けるおばあちゃん。最後に読者に向けてメッセージをもらった。

「若いうちだったら何回でも修正できますから、やりたいことをやればいいと思うんです。ただ、人のせいにはしないでね。“親が言ったから”“あの人が言ったから”じゃなくて、自分がやりたいことをやればいい。

人の言うことに乗っかって失敗したら“親が言ったからだ”“お前が言ったからだ”ってなっちゃう。とにかく人のせいにしないで、自分のやりたいように。そうすればなんでも楽しみながらできますからね」

(取材:梅山 織愛)


プロフィール
 
おばあちゃん
生年月日:1947年2月12日
血液型:O型
出身地:東京都 国分寺市
趣味:近場の温泉に行くこと
出身/入社/入門:東京NSC24期