免疫の「6大機能」で感染症から体を守る

では、自然治癒力のなかでも、特に焦点を当てたい免疫について、詳しく説明していきます。免疫は体内で感染症や異物から体を守るための重要な生理学的機能を担っています。

免疫の主な役割と機能には、以下のようなものがあります。

〈1〉感染症への防御

免疫システムは、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などの、病原体から体を守る役割を果たします。これらの病原体が侵入すると、免疫応答が起こり、感染を制御しようとします。

〈2〉異物排除

免疫システムは、異物や毒素を体内から排除する役割も担います。例えば、切り傷や擦り傷から感染しないように、傷口を清潔に保ち、異物を排除しようとします。

〈3〉自己対非自己の識別

自己(自分自身)とは、あなたの体内に本来存在している細胞や組織です。例えば、肌・筋肉・臓器などが自己です。免疫システムは自己を保護し、これらの細胞や組織に攻撃を仕掛けません。

一方、非自己(他人や異物)とは、あなたの体内には通常存在しないもので、感染症の原因となる細菌・ウイルス・真菌などの病原体や、移植された他人の組織などが含まれます。免疫システムは非自己を識別し、異物や病原体を攻撃して排除しようとします。これによって体を感染症や疾患から守ります。

免疫システムは、自分自身の細胞と非自己の細胞や異物を識別することができます。これにより、自己免疫疾患を防ぎ、体内の健康な細胞を攻撃しないようになっています。

正しく機能することで健康を維持しているのですが、時折、免疫システムが誤って自己を攻撃する、自己免疫疾患が発生することがあります。これは自己と非自己の識別がうまくいかない状態で、免疫システムが誤って自己の組織を攻撃してしまう病気です。例として、リウマチ性関節炎や全身性エリテマトーデス(SLE)などがあります。

▲免疫の「6大機能」で感染症から体を守る イメージ:buritora / PIXTA

〈4〉免疫記憶

免疫システムは、過去に遭遇した病原体に対する記憶(免疫記憶)を保持します。これにより、同じ病原体が再び侵入した場合、より迅速かつ効率的な免疫応答がおこなわれ、感染を効果的に制御できます。これがワクチンの基本原理のひとつです。

〈5〉炎症の調節

免疫システムは、炎症を引き起こすことで感染症や損傷に対抗します。炎症は免疫細胞を感染現場に誘引し、病原体を排除し、損傷した組織の修復を促します。しかし、過度な炎症は疾患や組織の損傷を引き起こすことがあり、免疫システムは適切に調節する必要があります。

〈6〉免疫システムの制御

過剰な免疫が働かないように制御する機能で、免疫のバランスを維持するために重要です。この制御する機能が低下すると、過剰な免疫応答や過剰な炎症が誘発され、免疫バランスが崩壊してしまいます。

このように免疫システムは非常に複雑で多様な機能を持っており、体内の健康を維持するために欠かせない役割を果たしているのです。