NHK連続テレビ小説『あんぱん』に、柳井家の女中・宇戸しん役で出演している俳優・瞳水ひまりさん。穏やかな佇まいと誠実さが滲むその演技の裏には、音楽に熱中した青春時代や、高知での豊かな原風景がありました。俳優という道を歩み始めたきっかけから、作品への思いまで——。大きな瞳で見るものを引き付ける瞳水ひまりさんに本誌は大注目。彼女の“今”を聞きました。

▲俳優・瞳水ひまり

“しわい”子どもだった幼少期

――まずは幼少期についてお伺いします。どんなお子さんでしたか?

瞳水ひまり(以下、瞳水):私は高知県出身なんですが、土佐弁で“しわい”っていう言葉があって、それがまさに私だったなって(笑)。いたずら好きというか、ちょっかいばっかりかけて、姉や弟にドッキリ仕掛けたりしていました。家ではそんな感じでわんぱくでしたが、学校ではわりと落ち着いていて。騒ぐよりも、友達とゆっくり話すのが好きなタイプでしたね。

――成長するにつれて、熱中したことはありましたか?

瞳水:中学・高校と部活動には入ってなかったんですが、その代わりに音楽に夢中でした。高校生のときにギターを始めて、家に帰ってからずっと弾いていました。特に、銀杏BOYZさんの『もしも君が泣くならば』や、THE BLUE HEARTSさんの曲をよく弾いてました。コードも簡単で、始めたての自分にはちょうど良くて。

――銀杏BOYZやTHE BLUE HEARTSが好きだったんですね。同世代では少し珍しい気もします。

瞳水:そうですね、周りにはあまりいなかったかもしれません(笑)。でも、音楽は本当に好きで、ライブにもよく行っていました。誰かと共有するというよりは、自分で楽しんで、自分の世界に浸るような感じでした。

――そんな日々を経て、今は俳優として邁進中ですが、演じることに興味を持ったきっかけは?

瞳水:最初に俳優という職業に憧れたのは、小学5年生のときに観たNHKのドラマ『二十歳と一匹』(2015年放送)です。主演は菅田将暉さんで、災害救助犬の訓練士の物語だったんですが、もともと犬が大好きだったので、「こういう仕事に就きたい!」って憧れました。

その後、両親がドキュメンタリーを見せてくれたんですが、実際の訓練士の姿を見たときに「想像していたのと違うかも」と感じて…。それと同時に気づいたんです。「私って、ドラマを観て職業に憧れることが多いな」って。きっと、その職業を“伝えている側”に惹かれていたんだと思います。そこから、俳優に興味を持ち始めました。

――上京のきっかけは?

瞳水:きっかけは『ミスiD』(講談社主催)というオーディションです。その時はまだ「俳優になれる」なんて思ってなかったんですが、悩んでいた時期にテレビや映画を見て元気をもらった経験があって。自分も誰かに力を届けられるような存在になれたら、と思って応募しました。そこでアイドルの方に声をかけていただいて、東京へ出て、1年半ほどアイドル活動もしていました。でもやっぱり、ずっと憧れていたのは“俳優”の仕事でした。19歳のとき、「今しかない」と思ってアイドルを辞め、俳優を目指す決意をしました。