ハンバーガーも音楽も人を元気にすることができる

――ちなみに、このプロジェクトはいつ頃から着想されていたんですか?

太田:具体的に動き出したのは、ちょうど1年前くらいですね。それまでにも、外食と音楽を結びつけたいとは考えていましたけど、オーディション形式にして進めていこうと決めたのは、1年前ですね。コロナが5類に移行して、人が集まっても大丈夫な状態になった。このタイミングを機に進めて行こうと舵を切りました。

――コロナ禍は大きな要因になっていますか?

太田:はい。コロナ禍はいろんなものを変えてしまいました。我々、外食産業も商品の売り方を変えないといけなくなったり、音楽業界ではライブハウスが良くない存在のように報道されました。あの当時、多くニュースでも流れていましたけど、フェスを開催することも悪のような扱いになっていたり……。

あの報道を見たときに、ちょっと偏っているなと思ったんです。こんなことをやっていたら、みんなの好きな音楽がなくなってしまうと。我々もハンバーガーを食べて元気になってもらいたいんですけど、音楽をやっている方たちも音楽を聴いて元気になってもらいたいわけじゃないですか。「人を応援したい!」という心意気は、我々もミュージシャンの方たちも変わらないので。

そこで、同じ志を持っているのではあれば、業界が違えども一緒に組んじゃおうと勝手に思ったんです。自分にもミュージシャンの友人がいて、「ライブもなくなったし、モスバーガーでバイトでもしようかな」と言われたんです。半分冗談かもしれないけど、そんなことを言ってしまうほど、苦労している姿を見ていましたから。

――音楽と外食の結びつきを研究されていたんですよね。

太田:はい、我々の会社は外食ですけど、何かと何かの組み合わせで新しいもの作るということを大事しています。ハンバーガー自体も、アメリカからハンバーガーを持ってきて、日本人の舌に合うように変換して日本で展開したものなんです。

だから、 何か違うものと違うものを組み合わせして、新しいものを生み出すことを当初から続けてきた会社。音楽もそうじゃないですか? さまざまなものを掛け合わせて新しい音楽を生み出していく。これって同じ制作活動なんじゃないかと思うんです。

――今回のプロジェクトは、幅広いアーティストを生み出そうとしていますよね。シンガー・バンド・ダンサー・トラックメーカー・作曲家・ダンサーなどなど、音楽にまつわる活動者であればなんでもOKということも魅力だと思うんです。この先、MOS RECORDSからどのようなアーティストが誕生してほしいと考えていますか?

太田:僕らと一緒にやってくださるということは、現時点で社員・アルバイトをしているということ。チェーンに属してもらえるということは、ある種、人生そのもの、生き様だと思うんです。

それはレーベルに属する場合でも同じで、我々が大事にしている人生観である「利他の心」であったり、人間貢献や社会貢献という理念を掲げてやっているんですが、そういった心を持ったアーティスト、そういうったことを表現できるアーティストが、たくさん出てきてくれたらうれしいです。

自分のことより、他人のことを優先できるような人たち。ちゃんと周りのことを考えられる人たちで、なおかつ応援ができる人たち。そんなレーベルになったらいいなと考えています。

音楽プロデューサーの海老原俊之がプロジェクト参加

――将来的にMOS RECORDSはどのような形になっていくのでしょうか。現時点でのビジョンについても教えてください。

太田:僕らが思っていたよりも反響がありました。期待値は大きいのかなと感じています。その期待にはしっかりと応えていきたいと思いますし、どんどんレーベルを大きくしていって、将来的には一般の方からの応募も視野に入れています。

歌が上手い人、ギターが上手い人、ベースやドラムが上手い人など、点を線でつないで、まとめ上げるのも我々のミッションだと思っています。そこから世界で通用するアーティストが出たら、最高ですよね!

――現時点でも応募が集まっている状況だと思いますが、今回のプロジェクトには心強い監修者として、音楽プロデューサーの海老原俊之氏が参画していますね。

太田:僕が外食×音楽をやりたいと、いろんな人にベラベラ喋っていてもあまり相手にされなかったんですど、そのなかで“海老原さんというレジェンドがいるから、紹介しますよ”と言ってくれた方がいたんです。

海老原さんは、モスバーガーのことをよく知ってくださっていて、もちろんビッグな方たちのプロデューサーをされていた方ですから、音楽業界にも精通されている。非常に心強いですし、お力添えしていただこうということになったんです。

――なるほど。どのように審査は進んでいくのでしょうか。

太田:まずはサンプル音源を提出していただいて、海老原さんと我々で聴いていくことからスタートして、魅力を感じる方が現れたら、オーディションをさせていただくという流れになります。今も集まった音源を聴いている最中です。

現在進行形で路上ライブをしている方もいるし、セミプロの方、ビッグバンドに所属していたという経歴の方もいます。今回は若いというだけが条件ではないし、30歳でも40歳でもいいと思っていますから。人を感動させる才能があるのではあれば、年齢では区切ってはいけないと思っています。

▲審査会場の外にはモス店舗のような手書きの黒板

――ここで改めて、MOS RECORDSの魅力は?

太田:ビジネス的な側面で言うと、モスバーガーは全国に1300店舗以上あるので、その店舗でプロモーションができると考えると、ものすごくインパクトがあると思うんです。それにプラスして、185か国にサブスク配信させてもらいますし、公式のXのアカウントのフォロワーは180万人くらいいますから、そこで宣伝しようと思っています。

あとは、モスバーガーとのコラボグッズを制作し、グッズの収益も見込めたり、自分がやっていることが世界に広がっていく、すごいことじゃないですか。だから、一番の魅力は夢だと思います。大きな夢が見れる!

――スケールが大きいですよね。なかなか体験できることではない。

太田:ですよね! 1300店舗、北海道から石垣島までモスバーガーはありますから。そこに自分の顔や音楽が出ると考えたら……。

――デジタルだけでなく、フィジカルでさまざまな展開ができることを考えると、音楽の価値の再確認にもつながる気がします。

太田:ただ売れたい、ということではなく、僕らもアーティストを応援するのであれば、その人の生き様を応援したいので、そういったアーティストにたくさん出てきてもらいたいです。そして、清潔感というのは大きな要素になると思います。我々は外食産業で、モスバーガーというブランドを背負ってやっていくので。

――最後に改めて、今後の展望を教えてください。

太田:まだこれからなので今後の展望を語るのは難しいですが、まずは1回目のオーディションをします。コンテストではない、あくまでもオーディションです。順位をつけるわけではないし、もしかしたら合格者はゼロかもしれない。そしたらすぐに2回目のオーディションをしますけど。まずは、1人目のアーティストの方をちゃんとご支援させていただくことがスタートだと思います。

本当にどんな反応が起こるか、まだわからないですから、先の読めない状況を楽しみながらやっていきたいと思っています。

(取材:笹谷 淳介)