昨年めでたくも還暦を迎えた錦織一清。演出家・俳優としてはもちろん、音楽面でもパパイヤ鈴木とのダンスボーカルユニットFunky Diamond 18として、またソロアーティストとして精力的に活動中だ。この5月にはソロ名義で2度目のカバーアルバムをリリースし、写真集&カレンダーも発売。今後は映画監督にも初挑戦する。メモリアルイヤーを経てもなお、その多才ぶりに拍車がかかっている彼に話を聞いた。
実は10代の頃から歌っていたブルース。“好き”が詰まったアルバムに
――リリースされたばかりのアルバム『Blues Style Collection ~10カラットな夜のグラスに~』は、往年の日本のブルースのカバーアルバム。今の年齢になった錦織さんにぴったりの楽曲が揃っていて、とても渋い仕上がりです。錦織さんにとって、ソロでの音楽活動はどんな楽しさがありますか?
錦織一清 (以下、錦織):自分の歌いたい曲が歌える喜びです。そして、こういった楽曲をのちの世代に残していきたいという思いもあります。僕らの先輩歌手って、伊東ゆかりさんにしても中尾ミエさんにしても多くの方が洋楽のジャズの名曲をカバーしていて。今度は僕らがそういう風に残していきたいなと。でも、僕はジャズを歌えないから歌謡曲やブルースを歌ったんです。
――名曲を後世に残したかったと。
錦織:だから自分が名曲だと思う曲ばかりです。そんな風に自分で思えないのに「これを歌ったらみんなが喜ぶんじゃない?」という曲をやるのは、僕は卑怯だと思うし、自分が面白かったと感じたことには嘘をつきたくないから。
――このアルバムの10曲も、そういう基準で選んだんですか?
錦織:ここに入っている曲はみんな僕が20代の頃、それこそまだカラオケ店のない時代に、お酒を飲んでるおじさんたちの横で歌っていた曲なんです。自分の持ち歌よりも数を歌っている曲です(笑)。
――サウンド・プロデューサーの冨田謙さんを筆頭に、ギターはNONA REEVESの奥田健介さん、ベースは鹿島達也さん、ドラムはウルフルズのサンコンJr.さん、サックスは辻本美博さんと、実力派ミュージシャンが名を連ねていますね。さらにコーラスには盟友のパパイヤ鈴木さん、平岡恵子さんも参加されていて。サウンド面やアレンジで気に入っている部分はありますか?
錦織:色んなポイントがあるんです。冨田さんは、僕の中で「こうくるのかな?」と思っていたのを、いい意味で期待を裏切ってくれる。「ここでクラリネットが来るのか!」とかね。僕もあまり具体的に指示をするわけじゃなくて、「俺はこう思っているんだよね」とだけ伝えると、それだけで冨田さんもミュージシャンのみんなもちゃんとやってくれるから。
「自分が楽しめるようにやってみようよ。それがひとつになったら面白いよ」という感じでなんです。僕がやってるアルバムなんだから、「絶対にこうして」と決めつけるのではなく、やってる人たちみんなが楽しくないとなって思ってね。
――みなさんが楽しんでいる音がそこで鳴っているアルバムなんですね。
錦織:そう。それが一番!
――錦織さんが思うブルースの魅力とは?
錦織:千鳥足なところかな? なんか、チドってる(笑)。そこが素敵だよね。ロックなんかだとメッセージがガーンと刺さってくる感じだけど、ブルースって染みてくるもの。だからカッコいいんだよね。僕がブルースに興味を持ち始めたのはわりと遅くて、10代後半くらいだったかな。『夜のヒットスタジオ』に出た時に、憂歌団が『嘘は罪』って曲を歌っていてね。それにしびれちゃって。
木村(充揮)さんは、ボロボロだけどカッコいいギターを弾いていて。彼らの出番のあと木村さんに「いいギターですね」って話しかけたら、(木村のモノマネで)「これ安いよ、安いよ」って(笑)。それでアルフィーの幸ちゃん(坂崎幸之助)と一緒に九段会館でのコンサートを観に行ったりもしました。
――長年のブルースファンだったんですね。
錦織:好きでしたね。意外かもしれないけど、10代の頃からブルースとか、ボサノバも聴いてたんです。(アントニオ・カルロス・)ジョビンとかジョアン・ジルベルトは最高です。『ワンノートサンバ』とか大好き。
――そういう錦織さんだから、昔のブルースを歌ってもハマるんでしょうね。ご自身がお好きで歌っているから。
錦織: そうだね。今回カバーした『青い瞳のステラ』の柳ジョージさんもチョイ悪な感じが好きなんだよね。ちょっと荒くれ者みたいなさ。僕も下町育ちだから。
――ご自身の“好き”が詰まったアルバムになっているんですね。61歳の誕生日前夜の5月21日と当日の22日には、「Funky Diamond 18 Presents 錦織一清 Birthday Lunch・Dinner Party 〜You 座っちゃいなyo〜」と題したバースデーパーティーがヒルトン東京お台場で開催されました。そこでもアルバムに参加した冨田さん、鹿島さん、平岡さんとセッションされたそうですね。ご感想は?
錦織:バースデーパーティーって、来た人たちから♪Happy Birthdayを歌ってもらえるものだと思っていたら、自分が歌うのかよって(笑)。あの時は昔の曲もセットリストに入れたんです。僕は、昔の曲をやる時もアレンジで崩しちゃうのが好きでね。「こういう風にしたら面白いんじゃないの?」って。
アンコールの緞帳が開く前に「イントロをドゥービー・ブラザーズの『Long Train Runnin'』みたいな感じにしよう」とか言って(とそのメロディを歌い出す)。そこから『What's your name?』に入っていったり。そういう渋めのアレンジが大好きなんです。「オリジナル通りにやろうよ」とバンドメンバーからは怒られるんだけど(笑)。例えば、『君だけに』をボサノバ調にしても面白いんじゃない?
――アレンジ祭りのライブもいいですね(笑)。Funky Diamond 18としては、パパイヤ鈴木さんの60歳記念ライブ「Papaya Suzuki 60th Anniversary Live 〜Fire Horse〜」の神戸と東京での公演も目前に控えていますね。
錦織:そうですね。そこではブルースのカバーもガンガンいきたいと思います。


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