今日から始めてほしい簡単なメンズ美容

それでは実際に、どのようなセルフケアを始めればいいのか。気軽に取り入れることができる、メンズ美容のセルフケア方法について聞いてみた。

「こんなことが美容に!? と思われるかもしれませんが、お酒を飲むときは、チェイサーと1対1で飲むようにしてみてください。私もお酒がすごく好きで、日本酒やワインをよく飲むんですけど、肝臓のことや翌日のパフォーマンスのことを考えて、必ずチェイサーを意識して飲むようにしています。

あとは蒸留酒のほうが太りにくいので、ウイスキーやウォッカ、焼酎を飲めるのであれば、そちらがおすすめです。そんなことをアドバイスしておきながら、私は上手に飲めていないのですが(笑)」

連日、過酷な暑さが続いている日本。そんな夏場では少なからず体の水分量を保つ役割にもなると語る。

「1リットルのビールを飲むと、1.2リットルが尿として外に出てしまうので、脱水にならないためにもチェイサーが必要です。脱水になってしまうと血液がドロドロになったり、お肌が乾燥するので美容にとってもいいことはありません。また、お水の種類は硬水がおすすめです。ただし、硬水がお腹に合わない方もいると思うので、体質と相談しながら硬水か軟水か選択してください」

誰もが毎日している洗顔方法についても聞いてみた。

「私が推奨しているのはすごくシンプルで、34度くらいのぬるま湯で純石鹸を使い、顔を擦りすぎないように洗うだけです。純石鹸とは、ほとんどの成分が石鹸で、それ以外の香料や着色料などがほとんど入っていないもの。市販で売っていますし、パッケージの裏面を見れば成分が書いてあるのでわかると思います。

どうしてもビタミンC配合など、肌に良さそうな成分に目がいってしまうと思うんですが、ビタミンCはほんの数%しか入っていません。それ以外が良くない成分であれば意味がないですし、それよりは余計なものが入っていない純石鹸のほうが私は良いと思います」

さらに、夏場特有のセルフケアについてもアドバイスをいただいた。

「遮光はすごく大切です。長袖を着たり、日傘を使うなどの物理的な遮光が一番良いでしょう。まずは日に直接当たらないことを意識してみてください。物理的な遮光があったうえで、地面からの照り返しなどの対策として、日焼け止めを塗るほうが良いと思います」

▲日焼け止めを使う、という意識づけから始めましょう

日焼け止めを使う男性も増えている昨今、選び方も重要だと明かす。

「日焼け止めは、SPF50やPA+++などの強いものを日常生活で使う必要はありません。なぜなら、強いものは場合によってはクレンジングが必要だったり、ウォータープルーフなどは肌に対しては負担になります。

そのなかでも紫外線吸収剤が含まれているものは、皮膚の表面で化学反応が起きるので避けたほうがいいので、紫外線散乱剤が入っているものをオススメします。細かくアドバイスしてしまいましたが、今まで日焼け止めを使っていなかった方が成分まで調べるのは大変だと思うので、まずは“日焼け止めを使う”という意識が大切です」

その人自身の持ち味や魅力を活かすことが大事

そして次は、“全ての人に与えられている美の特効薬”と明かす睡眠の重要性について教えてもらった。

「男性の場合は、デジタルデトックスが必要だと感じています。私も人のことは言えないんですが、まず私が始めたことは寝室にスマホを持ち込まないこと。ブルーライトを浴びることで、脳がまだ昼だと思ってしまうんです。

そうするとメラトニンが出にくくなり、細胞を修復してくれる成長ホルモンの分泌を低下させてしまいます。睡眠不足は血管を老化させてしまいますし、結果的に肥満や肌荒れの原因につながります」

さらに、睡眠不足は肥満と密接な関係があるという。

「睡眠障害が起きると太りやすくなります。その原因はレプチンとグレリンという2つのホルモンです。レプチンは“満腹だ”という信号を出し、グレリンは強い空腹感の引き金になり食欲を増加させます。

つまり、睡眠不足はレプチンを減少させ、かつグレリンを増やしてしまう。結果、食べすぎてしまって肥満へとつながってしまうんです。睡眠は全ての人に与えられた美の特効薬なので、ぜひ睡眠は疎かにせず重きを置いてみてください」

最後に、“魅力的で飾らない美しさを放つ男性像の実現”をモットーにしている西嶌氏のメンズ美容にかける思いを聞いた。

「その人自身の持ち味や魅力を活かすことが大事だと思っています。例えば、美容医療では鼻を高くしたり、二重にするなどの方法がいろいろありますが、私は形を整えるというより、今ある自分をより美しくするほうがいいと感じます。

ダイエットについても、太ってることが悪いというわけではありません。ただ、ボディコントロールができると自己肯定感が上がると思うんです。そういう意味でも、その人の魅力を一番引き立たせるような、ナチュラルビューティーを目指してほしいです。

自分が良いと思う姿に整形することを選ぶのか、今の自分を磨いてナチュラルに美しくなるのか。もちろん整形することを否定しているわけではありません。人生100年時代なので、その先の人生も想像することが大切だと私は思っています」

(取材・撮影:TATSUYA ITO) 


プロフィール
西嶌 暁生(にしじま・あきお)
1984年生まれ。六人兄弟の五男として富山県で生まれる。2011年福井大学医学部医学科を卒業。医師免許を取得。2013年筑波大学形成外科に入局。2019年筑波大学大学院博士(医学)課程修了。医療法人道心会 恵比寿形成美容クリニックに副院長として勤務。2020年英国国立アングリア・ラスキン大学経営修士課程修了。2023年より恵比寿こもれびクリニック院長として日々医療に携わる。