バイトが辞められるとは思ってなかった
――お二人の状況が変わったのは、やはり去年の『M-1』敗者復活戦以降ですか?
町田:そうですね。準決勝後もUber Eatsのバイトを普通にしてたんですけど、敗者復活戦後は1回もやってないです。バイトを辞められるとは思ってなかったんですね。
佐々木:準決勝に残ったとき、“準決勝に行けば、次の年の『M-1』までぐらいはバイトしなくてもギリ行けるよな? 準決勝ってことは全国の30組に入ったってことだから、さすがにバイトは辞められるよな、大丈夫だよな?”みたいな確認をしていたくらいなので、ここまで変わるとは考えてなかったですね。
――想像以上の影響力だった。
佐々木:そうですね。敗者復活以降後の世界線でいったら、一番いい世界線に行けたのかなって感じはしますね。“この人も俺らのこと知ってくれてるんだ”みたいなのが、めっちゃ増えたんですよ。
ルミネの出番のとき、トータルテンボスさんに挨拶しに行ったら、「『敗者復活戦』でおもしろかったヤツらだろ!」みたいに言ってくれたり、とろサーモンさんとか、これまでは全然しゃべれる人じゃなかったのに、エバースって認識したうえで話しかけてくれたり。まだまだ「今、俺、トータルテンボスとか、とろサーモンとしゃべってるよ!」みたいな気持ちになりますね。
――特にうれしかった言葉とかありますか?
佐々木:みんな褒めてくれて、どれもうれしかったんですけど、特に印象に残ってるのでいうと、南海キャンディーズの山里(亮太)さんがラジオで「エバースのネタを見て、若いときのダウンタウン見たときの先輩芸人もこんな気持ちだったのかな」みたいな話をしてたんですよ。もちろん、そんなことはないと思うんですけど(笑)。
――山里さんは『ABC』でMCされてましたよね。
町田:佐々木はめっちゃしゃべってたよな。
佐々木:そうですね。打ち上げにも来てくださって、けっこうしゃべらせてもらいましたけど、『ABC』では僕がめっちゃミスってたんで気を遣わせちゃって。「佐々木くんでもそんな緊張することあるんだね」ってフォローしてもらいました。
――ちなみに、お二人は緊張しやすいタイプなんですか?
佐々木:緊張というか、そもそも結構ネタをミスるタイプのコンビではあります。『ABC』でミスったことで、「めっちゃ緊張してたな」とか言われるんですけど、冷静に考えると普段の寄席とかでも二人ともめっちゃ噛んでるんすよ。だから、俺ら普段からこんくらいミスってるよな、あのときだけじゃないか、みたいな。
町田:たしかにそうっすね。あのとき特別に緊張してたからとかではないです。
『M-1』3回戦突破で変わった世界
――これまでと比べてコンビとして今の状況はいかがですか?
佐々木:今も別に売れてはないんですけど、もしかしたら一番楽しいときかもしれないですね。ライブ終わったら芸人と飯行ったり飲みに行ったりして、ああでもないこうでもないってしゃべるみたいな。もっとテレビに出たりするような本当の売れっ子になったら、そういうのもできなそうだし……どうなるのかはわかんないですけどね。
町田:芸人やった最後に、“あのとき楽しかったな”って思うのは今かもしれないですね。バイトも辞められたし。
――やはり、あの敗者復活戦が芸人人生のターニングポイントだったと。
町田:あーでも、うれしさでいうと『M-1』で3回戦に初めて行ったときのほうが大きいかもですね。本当に自分たちの中だけですけど、ガラッと状況が変わったので。
佐々木:いま考えたら、それも別に何もうれしがることないレベルのことなんですけど、当時はめっちゃうれしかったですね。同期とか、同じぐらいのライブ出てる人たちの見る目がだいぶ変わりました。
町田:それに、あのときは3回戦行けなかったら辞めてた可能性もあったので。去年、敗者復活戦は確かに影響は大きかったですけど、準決勝に行けなかったとしても、辞めてはなかったと思います。
――それだけ3回戦の壁は高いんですね。そもそも、お二人はどんな方に憧れて芸人を目指したんですか?
佐々木:僕はダイアンさんですね。学生のときはラジオも毎週聴いていたし、芸人になろうと思ったきっかけでいうと、ダイアンさんです。
町田:僕は芸人になるまで、本当に『ロンハー(ロンドンハーツ)』(テレビ朝日系列)とか見るくらいしか触れてなかったんですよ。でも、芸人になってからでいうと、やっぱりオズワルドさんとか漫才師の先輩はカッコイイなって思います。それは東京大阪、関係なく。