欧米の若者たちも「車離れ」している

豊かになったからある程度生活に満足しているし、低成長経済なので、頑張っても頑張った分だけ対価を得られない社会になっているため、だったら頑張るのをやめよう──と思う若者が潜在的に増えるのかもしれない。事実、今、欧米先進国はどの国も例外なく、日本同様「若者に元気がなくなった論」がメディア上で叫ばれている。

アメリカでもイギリスでもドイツでもフランスでも「若者の車離れ」が顕著であるし、アメリカでもドイツでも「若者のビール離れ」が加速している。いわんや、高齢者になっても性欲旺盛なベルルスコーニ元首相を生んだ情熱の国イタリアでさえも「若者の草食化」がしきりに言われているのだ。つまり、日本だけでなく欧米の若者たちも「チルってる」若者になりつつあるのだ。

しかも、欧米、特に欧州の若者の就職状況はかなり厳しい状況(例えば15~24歳の失業率はイタリアで40%、フランスで30%〈2016年〉)なのに対し、日本の若者の就職状況は大変良くなってきている。

人間が一番怖いことは食い扶持を得られないことなわけで、もともと「チルな日本の若者たち」が、楽に就職・転職できるようになったのだから、ことさらガツガツしなくなるのは自明の理であるだろう。

ミレニアル世代の特徴②:進んだ「個人主義化」

ミレニアル世代の二つ目の特徴は、彼らの間で極端に「個人主義化」が進んだことだ。彼らは一見、上の世代の日本人以上に調和的な顔つき・態度をとりながら、実際の中身はかなり個人主義化している。こうした大きなギャップが、ミレニアル世代への理解を大変困難にしている。

「個人主義化」と言えば聞こえは良いが、「利己主義化」と言ったほうが彼らの実態と近いかもしれない。もちろん、いつの時代も若者は利己的な生き物ではあるが、彼らの置かれている様々な状況がその傾向をより強めている可能性がある。

ワシントン条約で守られてきたミレニアル世代

彼らが利己主義化しているのは、超売り手市場における就職・転職のシーンにおいてのみではない。

彼らは子供の頃から人口が減り過ぎたせいで、ワシントン条約で守られている絶滅危惧種の動物のように、幼稚園、小学校、塾、中学校、高校、大学、会社など、人生のあらゆるステージで、彼らがいないと立ち行かなくなる組織や大人たちから三顧の礼をもって勧誘されて育ってきた。

例えば、生徒を呼び込むために制服を可愛く変更し、校則を緩くしている高校などいくらでもある。AO入試という名において、「ほぼゼロ試験」で学生を入学させている大学もたくさんある。また、今では昔のような暴力教師や怖い先生もほとんどいない。それどころか生徒たちとLINEでつながり、友達のように接する、優しくて生徒にとって都合の良い先生が評価されるようになっている。

つまり、社会や大人たちから顔色を窺われ、まるで中国の「小皇帝」と呼ばれる一人っ子世代のように生きてきたのが「日本版ミレニアル世代」なのである。