社会の闇と呼ばれるアンダーグラウンドを25年以上も取材し続けてきた作家・村田らむ。しかし、彼が最も恐怖を感じたのは、人の狂気が露わになる瞬間だった…。人の内側に潜む醜い本性を描く、思わず背筋が凍る人怖体験談をお届けする。
※本記事は、村田らむ:著『人怖3 人を狂気で染める日常の狂乱』(竹書房:刊)より一部を抜粋編集したものです。
有名タレントと入った喫茶店にて
こんな仕事をしていると、様々な人と出会うことがある。人の紹介で知り合ったのは、とあるテレビの制作会社で働く男性。その人から聞いたのは、こんな話だった。
とある男性芸人が、有名な男性タレントと仲がいい。男性タレントは、俳優であり、音楽もやっている人気絶頂な人だった。
その日は男性タレントさんの誕生日だったので、男二人だが、彼の家で軽くパーティーをしようってことになった。
近所のスーパーで食べ物やお酒を買ったあと、少し休憩しようと近くの喫茶店に入った。
その喫茶店はチェーン店ではない、マスターがいる昔ながらのお店で、結構混み合っていた。
家族連れ、老夫婦、女子高生などで賑わっていて、ちょっと顔バレが心配だったけど、端っこに座ってたら大丈夫かと一時間くらい話をした。
男性芸人を襲った違和感の正体とは
パーティーの途中、男性芸人はちょっと買い忘れた物があったんで外に出た。
マンションの外に出るとなぜかすごい違和感……というか既視感を感じる。
マンションの入口近くにいる人たちが何か。
家族連れ、老夫婦、女子高生……。
「あっ!!」
彼らは、そのまま先ほどの喫茶店にいた人たちだった。それに気づいた男性芸人は、ものすごい恐怖を感じたという。
当時、男性タレントは人気女性アイドルとの噂があった時期で、各社の週刊誌記者に狙われていた。その日も、
「誕生日に張りついていれば、撮れるだろう」
と張りついていたのだろう。
先ほどの喫茶店にいた客は全員が週刊誌の記者。会話も筒抜けだったのだろう。そう思うと周囲の人間がすべて記者に見え、「自分だけが知らない」という、世界から疎外されたような孤独と不安を感じたという。
それから男性タレントのマンションに行って男二人の小さなパーティーをした。