社会の闇と呼ばれるアンダーグラウンドを25年以上も取材し続けてきた村田らむ。そんな世の中の闇に精通する筆者が綴る、人の心の深淵を覗く「人怖(ヒトコワ)」ストーリー。いつも以上にアングラな人脈から集めた、恐怖があなたを襲う…。

今回はうまい投資話を信じた風俗嬢が陥ってしまった落とし穴の人怖…。

※本記事は、村田らむ:著『人怖2 人間の深淵なる闇に触れた瞬間』(竹書房:)より一部を抜粋編集したものです。

デザイナーズマンション、ブランド、高級車…

これは東京に住む女性から聞いた10数年前の話。

20歳の頃、私はH県でデリヘル嬢をしていました。

ある日、かなり豪華でオシャレなデザイナーズマンションに派遣されたんです。お客さんは40歳くらいのオジサン。

▲オシャレなデザイナーズマンションに行ってみると… まちゃー / PIXTA

サービスが終わって二人でまったりしていると、「将来、何したいの?」と聞かれました。

当時、私は風俗のかたわらマルチビジネスをやっていました。起業家向けのセミナーに参加したりして、将来は独り立ちしたいな~なんて思ってたんです。

「そのマルチビジネスは、ネズミ講っていう詐欺だよ。お金のこと、もっと真剣に考えたほうがいいよ」そう言うと、オジサンは部屋にある金庫から1000万円の札束を出して見せてくれました。ズラッとロレックスやエルメスのハイブランド品や、フェラーリやポルシェなどの高級車も見せられました。

「海外の投資先に一口20万円で投資する。すると一口ごとに月に5000円の金利がつく。ある程度投資したら金利だけで食べていくことができる。これが頭の良い暮らし方だよ」私はオジサンの話を、すっかり信じ込みました。

たまに勉強会をしようと、自宅マンションに呼ばれ、一緒にお風呂に入ったり性的搾取をされましたが、「これでお金儲けのノウハウを教えてもらえるなら、むしろ安いもんだ」そう考え、されるがままでした。

すっかりオジサンを信じ込んでいる私は、同じく風俗嬢で一緒にマルチビジネスをやっていたひとつ年上のEさんを誘いました。

Eさんは田舎出身の純朴なタイプ。素直で性格も良く、風俗でも容姿より愛嬌で人気のある人でした。何事にも熱心になるタイプで、マルチビジネスも私以上に入れ込んでいたのですが、今回も私が説明をすると、私以上にグングン信じ込んでいきました。

オジサンはデザイナーズマンション以外にも、海沿いに豪華な別荘を持っていました。
Eさんと二人で行くと、ものすごく豪華なパーティーが開かれていました。

プールに入り、バーベキューをして、寿司の職人やイタリアンのシェフが来て料理を作って。オジサン以外は全員若い女性で、まさにハーレム状態。

話をすると、全員私たちと同じ風俗嬢でした。みんなオジサンを信じて投資をしている仲間だから、すぐに意気投合しました。

オジサンが紹介してくれたコンサルタントの元で、将来の独立に向けてのセミナーをしたこともありました。その時には、住民票、印鑑証明、保険番号など全部提出しました。

「現金は手渡しか郵送じゃないと絶対にダメ。振込は税務署に目をつけられるからね」


そう教えられた私たちは、毎月せっせと風俗で働いて稼いだお金を平均50万円、多い時には100万円を日本郵便のレターパックに入れて送っていました。

私もかなり頑張っていましたが、Eさんの情熱は段違い。

常に風俗へ鬼出勤して、入ってきたお金のほとんどを全部オジサンに預けていました。