反省第1回「宙に浮くご馳走様」
「すがちゃんって、実は真面目でしょ」
こういうイジりをされることがよくある。
そりゃそうだ。全身赤色のスーツを着たチャラ男として世間に出ているので、実は中身は真逆なんです…というギャップを期待しているんだと思う。
これって、狩野英孝さん、オリラジの藤森さん、EXITさんといったチャラ男の先人たちが作ったイメージの上を歩かせてもらっているからだ。
でも、こればっかりは申し訳ない。オレは、全く真面目ではない。
だってさぁ、提出物の期限は遅れがちだしぃ、
バラエティー番組の収録前も「まぁなんとかなるっしょ。だってオレ、面白くてカッコいいし最高だもん。やれやれ今日も人々笑かすか、笑顔バズーカ発射準備完了!」って思っちゃうしぃ、
とにかくノリで乗り切ることが多いのだ。
でも、そんな不真面目さがたたってか、収録では記憶を失うほど滑って帰ってくる。そして、家に帰ってから尋常じゃないほど凹む。
大きな事から小さな事まで、誰かに文句を言われた訳でもないのに、心の中で「あー、この言い方カッコよくなかったか?」「もっとイケてる振る舞いがあったかも……」と、布団の中でひとしきりクヨクヨして大反省会を行うのだ。
今日の1人反省会の議題は、牛丼屋での立ち居振る舞いだ。
ある時、夜中に仕事終わりにお腹ペコペコまではいかないが、ペコくらいは空いてたので帰り道に牛丼屋さんに寄ることにした。
店内には特盛の定食をわんぱくにガッツいている自分と同世代くらいの30代のサラリーマンが1人。
米一粒ずつ食べてるのか? というくらいゆっくり牛丼を食べるお爺さんと、すでに食べ終わっているが携帯を見ながら時間を潰している若者が2人いた。
僕は、特に周りを気にする事なく、いつもの牛丼とおしんこに生卵と豚汁を付けたすがちゃんセットをサクッと食べて、食べ終わったおぼんを返却口に持っていき、「ご馳走様でした」と洗い物をしている外国人の店員さんに声をかけた。
すると、完全に無視された。
ん…………!
声が小さすぎたか? いや、日本語がわからなかっただけかも。
頭の中で無視された原因を突き止めようとしたけど、一旦思考を止めて一目散に店を出た。
「ええぇぇぇ、恥ずかしかったァァ!!!」
最初に出てきた感情はこれだった。
内緒の話なんだけど、実は少しだけ人に気を遣う恥ずかしがりの照れ屋ボーイの面もある。
だから店員さんへの一言は勇気を出した行動だったのだ。
じゃあなぜそんなリスクを背負ってまで「ご馳走様でした」を言ったのかと言うと、なんか粋だし、スマートな感じがしてかっこいいからだ。
ここでの問題は、店員さんがオレを無視したのか、聞こえなかったのかなんかはどうでもいい。
「ご馳走様が宙に浮いてる男」として、店内にいた他のお客さんにどう思われていたかが問題なのだ。
まず気になるのは2人組の若者。この2人は僕が店を出るまでの間こちらを見ていた。
「アイツご馳走様無視されてやんの! プププ笑」といじりの対象になっている可能性があるがここは大丈夫。帰る時一番かっこいい歩き方と只者ではない雰囲気を出したので、「そんな事よりあの人カッコいい!」となったはずだ。オッケーネクスト!
同世代のサラリーマンはご飯に夢中だったのであまりこちらを気にしている様子は無かった。
実は1番危険なのはゆっくりご飯を食べていたお爺さんだ。お爺さんはご飯を楽しむというよりも景色を見るついでにご飯を口に運ぶといった様子だったから視野も広く、オレが本当は恥ずかしくて仕方ないのを見抜いていたかもしれない。
ただこう考えよう。お爺さんはもしかしたら、「せっかく若者がご馳走様を言ったのに、なぜあの外国の店員は無視するんじゃろ?」とこちらの擁護に回っている可能性が高くないか?
そもそもこんな赤毛のチャラついたヤツが店員さんに「ご馳走様」というのは、素晴らしいギャップじゃない?
反省会の結果は、
『大丈夫。カッコよかった』
で終わった。素晴らしい結果となり、大満足だ。
ただ、強いて言うなら、声が少し小さめだったから次はもう少し大きい声で言おうという点だ。
このように僕は日々反省会を繰り広げているが
最終的にポジティブな着地になる。
だったら何のためにこんなクヨクヨをするのかというと、より良い振る舞いを目指すために我が身を振り返るという工程が美しいから。
そして、ここまで書いてきて今現在一つの議論が出ている。
「笑顔バズーカ発射準備完了!」のくだりは必要だったのか?
参った、今日も不真面目なくせに眠れない……。
次回、反省第2回「寿司の尻拭いはお茶でしかできない」は、3月20日(木)更新予定です。お楽しみに!!