いまや“成人男性の6人に1人が糖尿病”だとされています。治療の基本は「食事療法」と「運動療法」ですが、この2つの治療法は一生続けていく必要があることから、「マラソンと同じ過酷な長期レース」とも例えられています。そんな生活習慣病の1つである糖尿病にかかるリスクが高い人について、糖尿病専門病院の院長である益子茂氏が解説します。

※本記事は、益子茂:著『最新!糖尿病が気になる人の本』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

家族に糖尿病のいる人は発症リスクが高い

「糖尿病」といってもいろいろなケースがありますが、みなさん、〈そろそろ中高年……〉という年代にさしかかったあたりからこの病気とのつきあいが始まっていることは共通しています。「過食・運動不足」という生活環境下に置かれる現代社会では、まれに〈子どもの(2型)糖尿病〉というケースもあります。その場合には家族にも糖尿病の人がいる「遺伝性」の要因が疑われます。

肥満はなく、お酒も飲まず、生活態度がマジメな印象の人でも「糖尿病を患って食事制限」をしている、というケースではやはり「遺伝性の糖尿病」が考えられるでしょう。家族に糖尿病の人がいる場合は、膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌が遅れて量も不十分なため効きにくくなったり(インスリン分泌不全)、肝や筋肉でのインスリン作用が不十分だったりする体質(インスリン抵抗性)が遺伝することによって、細胞にブドウ糖が取り込まれにくくなり、慢性的に血糖値が異常に上昇してきます。

インスリンは、膵臓の“ランゲルハンス島”と呼ばれる細胞から分泌されるホルモンで、血液中に直接分泌されて全身に運ばれて、糖代謝の調節を行っています。そのため、不足すると、ブドウ糖などの栄養素の代謝が体内でうまくいかなくなってきます。

糖尿病というと、「尿に糖分が出る病気」と思っている人が多いのですが、正確には「インスリンの作用が不足して、血液中のブドウ糖(血糖)が増えすぎた病気」のことです。つまり、「血糖がコントロールできなくなって、高血糖が長く続いている状態」をいいます。