「誰よりも多く失敗するなかで教訓を得て、それを部下に伝えること」――リーダーの役割をこう定義したうえで、株式会社武蔵野・小山昇社長は「リーダーの条件」の残り2つを語ります。自社の新入社員に見られる世代的変化の傾向から始まったそのお話は、現代の社長(管理職)が求められているマインドセットと、小山昇氏が実践するリーダーとしての基本方針へと展開しました。

人よりも早く気づき的確な指示を出す

ダストコントロール業界は、右肩下がりの業界です。それなのになぜ、武蔵野は右肩上がりなのでしょうか。

それは、時代の変化・マーケットの変化・人の心の変化をいち早く察知して、戦略を変えてきたからです。私が今、販売戦略から人材戦略に大きく舵を切っているのも、若者のトレンドの変化に「いち早く気づいた」からです。

定性情報〔実際に若者と会話したときの印象〕と定量情報〔心理分析などの客観的なデータ〕を分析した結果を見ると「ゆとり世代」〔1987年~2004年ごろまでに生まれ、ゆとり教育を受けた世代〕以降の人材には、その前の世代とは違う特徴があることに気づきました。

ゆとり世代以降は「給料は人並みでいいので、『休み』や『自分の時間』が取れる会社がいい」と考える学生が増えている。

特に2018年以降は「チーム意識」が非常に強い。「同期の中で一番になりたい」「同期の中で、誰よりも早く出世したい」と考える新人は少数で「みんなで一緒に目標を達成したい」と考える。

武蔵野の内定者は「社長のかばん持ち研修」(小山昇のあらゆる場面に同行)があり、かばん持ちの最中に、私に50個以上の質問をするのが決まりです。

▲人よりも早く気づき的確な指示を出す イメージ:PIXTA

2017年までは「どうすれば課長になれますか?」「どうすれば同期で一番になれますか?」という仕事への意欲を垣間見せる質問が多かった。

ところが2018年以降は違います。「少しくらい相手の領域に土足で踏み込むことになっても、自分の知りたいことは遠慮せず聞く」というフランクさを見せる内定者が多い。要するに、相手のプライベートに踏み込んでくる(私はどんな質問もウェルカムなので、すべて正直に答えています)。

「小山さんのお財布の中には、今、現金がいくらありますか? 財布の中身を見せてください。数えさせてください」
「小山さんの初体験は、いつですか?」

子どもの頃からスマホを日常的に使いこなし「知りたい情報は、すぐに検索する」ことに慣れている彼ら彼女らにとって、知らないままにしておくことはストレスになる。だから、他人の家に土足で上がることも厭わないです(反面、自己開示を積極的にしないのも彼らの特徴です)。

若者のトレンドが変わってきた以上、従来の組織のあり方では彼らを戦力化するのは難しい。だから私はリーダーとして「人の採用と定着が、これからの時代の正しい戦略である」ことを社員に示しています。

刻々と変化する経営環境をにらみ、最善手を見出す。そして「こうしろ、ああしろ」と部下に指示を出すことが、リーダーに不可欠の資質です。

成果が出るまで誰よりも粘り強く汗をかく

ビジネスで重要なのは、1回で満点を取ることではありません。何度でも落第点を取ってもいいので、あきらめず、地道な努力を積み重ねて、最後に合格点に達することです。

「もうダメかもしれない」という崖っぷちに立たされても、あと1ミリ、あと1歩あがいてみる。すると、絶対絶命と思えた状況が一転し、大成功に転じることがあります。私は「良いこと」であっても「まだ成果が出ていないこと」には興味がない。私が興味のあるのは、成果が出ることです。

ビジネスで大事なのは成果です。だから「成果が出ると思ったことは、出るまで徹底してやる」のが、リーダーとしての私の基本方針です。武蔵野が何度も失敗しながら大逆転劇を演じることができたのは、私とわが社の幹部が、資金の尽きるまで、しぶとく、未練がましく、粘ったからです。

▲成果が出るまで誰よりも粘り強く汗をかく イメージ:PIXTA

新しい仕組みがうまく定着しないとき、普通の会社は社員が「できません」と報告をして、社長はそれを受け入れます。ところが私の場合は、社員から「できません」と言われたら、こう言い返します。

「いくらお金を使ったの? いくら人を投入したの? できるまで、1億でも2億でも使え!」

ここまで言われた社員は、やるしかない。だから社員は、嫌々ながらしかたなく、できるようになるまでやるようになる。部下に汗をかかせるために、誰よりも自分が汗をかく。そして結果に結びつける。それが、できるリーダーです。

※本記事は、小山昇:著『できるリーダーは失敗が9割 自分史上最高の営業利益を手に入れる「仕事」の極意』(マガジンハウス:刊)より一部を抜粋編集したものです。