昨年、日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーワールドカップ。史上初のベスト8進出を果たした日本代表、優勝を飾った南アフリカ代表、そしてイングランド代表の躍進も忘れてはならない。

決勝トーナメントの準決勝で、優勝候補筆頭のニュージーランド代表に19対7と完勝し、ラグビーの母国復活を鮮やかに印象付けた。そのイングランド代表を率いたのが、ご存知エディー・ジョーンズである。南半球や欧州では徐々にラグビーの試合が始まっている。これからも世界のラグビーは、この男に注目し続けることだろう。

ポジションを変えながら圧倒的な結果を出し続ける、名将の現在地を探る。

数々の結果を残してきた敏腕HCエディー・ジョーンズ

▲昨年のワールドカップでも、イングランド代表を率いてオールブラックスを破るなどインパクトを残した 写真:アフロ

2015年ワールドカップのイングランド大会では日本代表を率い、南アフリカ代表戦での金星を含む4戦3勝の快挙を成し遂げたエディー・ジョーンズHC。2019年の日本大会では、イングランド代表を率いて、皮肉にも決勝戦で南アフリカ代表に敗れ、準優勝の座に甘んじた。

稀代の名将、ジョーンズHCにとっては、ワールドカップ優勝経験もある強豪国イングランド代表を率いての準優勝は、悔しい結果であった。だが、2015年大会で地元開催ながらも予選リーグ敗退という、歴史に残る惨敗に終わったチームを、4年間でワールドカップ準優勝まで導いた手腕は、誰の目にも明らかだ。

昨年のワールドカップ終了時点での、イングランド・ラグビー協会(RFU)とジョーンズHCの契約は2021まで。だが今年に入り、代表HCとしての契約は、2023年フランス大会のワールドカップまで延長された。

サッカー・ゴルフ・テニス、そしてラグビー。プロスポーツ先進国のイギリスには、あらゆる競技の統括団体に、ビジネス面でも優秀な人材が集まる。

現在RFUでCEOを務めるビル・スウィーニー氏は、アディダスやプーマなどのスポーツ用品ビジネス界で、世界を股にかけてキャリアを築き、日本在住経験も持つ。現実的なビジネスマンの目で見れば、ジョーンズHCの2023年までの契約延長は、当然のオファーであろう。

辛辣な論調が多いイングランドのメディアが、どれだけジョーンズHCを批判する記事を書き立てたとしても、だ。

昨年のワールドカップ決勝戦翌日には、スウィーニーCEOは「時間がある時に、ワインでも飲みながら、この先の予定についてエディーと話し合う機会を楽しみにしている。当然、2023年までやってもらえれば、それにこしたことはない」とのコメントを残した。

しかしその後、契約延長に関する質問には「HCとして、自分がチームに必要とされているかどうかは、選手たちとグラウンドで時間を共に過ごさなければ分からない」と述べて即答を避けた名将。最終的に、2023年までの契約延長のニュースは、2020年シックスネーションズ〔イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズ・フランス・イタリアの代表チームで毎年2〜3月に行われる、欧州ラグビー最高峰の大会〕の開幕後に発表された。