TBS系のドラマ『半沢直樹』が絶好調だ。第1話から第4話まで視聴率22%以上を記録し「面白い!」「顔芸の応酬は現代の歌舞伎だ!」などと賛辞があふれている。しかし、その暑苦しい世界観は“おひとり”達人には受け付けられない。一方、前の時間帯にやっている『ポツンと一軒家』には共感を覚えるのだ。

絶好調の第2シーズンに漂う「少年ジャンプ感」

『半沢直樹』は2013年放送の前シリーズの頃から、しばしば『水戸黄門』に例えられ「経済を使った時代劇」とも呼ばれてきたドラマだ。

悪代官のような上司をやっつける勧善懲悪のストーリー。「この印籠が目に入らぬか!」と同じように飛び出す「倍返しだ!」の決めゼリフ。時折はさまる由美かおるの入浴シーンのような、壇蜜のセクシーショット。

確かに『半沢直樹』は、平成の水戸黄門だった。

しかし、現在放送されている続編は微妙にテイストが違う。悪役のキャラの濃さや、勧善懲悪のカタルシスは健在ながら「倍返し」の決めゼリフはあまり出てこないし、今田美桜のセクシーショットもない。

今シリーズは水戸黄門というよりも、かつて「友情・努力・勝利」の3原則で全盛期を築いた1990年代の『少年ジャンプ』の漫画を見ているような感想を抱く。特に友情やチームプレーの要素が前作よりも強調され、スーパーサラリーマン『半沢直樹』の個人の復讐の物語ではなくなっている。

▲絶好調の第2シーズンに漂う「少年ジャンプ感」 イメージ:PIXTA

ちなみに演出の福澤克雄ディレクターは、元ラグビーの選手としても知られるが、ラグビーの精神を表す有名な言葉「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」を今作に当てはめると、しっくりくる。「半沢はみんなのために。みんなは半沢のために」これが描かれるのが前作との違いだ。

『半沢直樹』に感情移入できない“おひとり”体質

ただ、おひとり達人の目線で『半沢直樹』を見ると、いまひとつ感情移入できない。どうしても、あの組織のドロドロした人間関係や裏切り、出世欲に上昇志向、権謀術数これらすべてに嫌悪感をおぼえる。

イヤなヤツがたくさん出てきて、汚い足の引っ張り合いが当たり前で、それが企業社会の厳しさであり、ビジネスマンは日々そんな現場で戦わなければならないんだ、ということを肯定しているかのような前提は好きになれない。

おひとり体質のはぐれザルは、基本的に人間関係が苦手だ。派閥とか裏切りという群れにおける立ち回りは、この世で最大級に嫌っている要素であり、できれば避けて通りたい。

結論を急ぐなら『半沢直樹』を観て「うんうん。仲間と協力して、嫌な上司をぎゃふんと言わせるなんて最高だ!」と感じる人は、企業社会で生きていけるだろうし、おひとり道も歩まない。

反対に『半沢直樹』を観て「あー。ヤだ、ヤだ。こんな人間関係が当たり前だったら、オレは一生ひとりでいいし、会社でも出世と関係ない部署でいいや」と思う人が、おひとり道を歩む。

もちろん、ドラマをエンターテインメントとして楽しむことは別の話だから、これは作品のディスりではありません。

主人公の敵役・大和田を演じる香川照之も、自身のSNSで「猿之助さんとの親戚漫才をお楽しみ下さい!」というメッセージを発しているくらいだから、あの過剰なまでの演出と、顔面ひん曲げ歌舞伎演技の応酬を、笑いながら楽しむ見方は公認されている。『半沢直樹』は半分コメディとして観るのが正しいのかも知れない。