日本が生み出した文字文化「絵文字」は、日本人のみならず外国人をも虜にする。ロシア出身で、早稲田大学で笹原宏之氏のもとで日本の文字文化を学んだシャルコ・アンナさんが絵文字の歴史と魅力、そこから見えてくる日本人独特のコミュニケーションの特性を、他言語との比較を交えて迫っていく。BEST T!MESで好評を博した連載がパワーアップして『NewsCrunch』に登場。

ライバルが増えても揺るがないスマイリーフェイスの存在感

メールやSNSなどで毎日何度も目にする絵文字。ユーザーの需要に合わせて、毎年新しい絵文字が追加されています。例えば、昨年の2月に、ニンニク、カワウソといった食べ物・動物の絵文字や障碍者関連の絵文字など、230個新たに追加され、ユニコードに収録されている絵文字の数が3178個にまで膨らみました(2019年12月27日現在)。

ちなみに、1990年代のソフトバンクやドコモの絵文字の数はわずか100個前後。2008年にリリースされたアップルの絵文字セットでも471個。10年後には絵文字の数はどうなっているのか?! ちょっと恐ろしいくらいですね。

しかし、絵文字の数がいくら増えても、やはり一番馴染みがあって、使用頻度が高いのは、この丸くて黄色いスマイリーフェイス系の絵文字ではないでしょうか →😃

今や、それを見たことがない人はいないというくらいメジャーになった、あの黄色い絵文字。そもそもなんでそんな色とデザインになったのか? ということが最近ふと気になりました。携帯電話・スマートフォンの絵文字は日本発祥だとされています。ということはデザインも日本発祥なのでしょうか。

ここでソフトバンクやドコモの初期セットを見てみましょう。どこにも、黄色い絵文字や、丸い絵文字は見当たりません。 

図1 ソフトバンクとドコモの初期の絵文字と2018年版のアップルの絵文字
(出典:Emojipedia https://blog.emojipedia.org/correcting-the-record-on-the-first-emoji-set/)

 

左から一番目の列、表情を表す絵文字を見てみると、1997年のソフトバンクの絵文字セットでは、色は白黒で玉ねぎのような形。1999年ドコモの絵文字セットでは超ミニマリスティックで目と口がわずか三本の線で構成されています。対して2018年のアップルの絵文字セットでは、黄色く丸いマークになっていますね。