配達員にしか顔を見られないという利点

毎年秋から冬にかけて発売されるマクドナルドの三角チョコパイ。この商品は特に女性に大人気で、私の配達履歴や主観から推測するに頼む人の9割以上が女性です。エレベーターを降りると、たくさんのドアが並ぶ単身者用マンションまでよく運んでいます。

そんな三角チョコパイの思い出で印象的だったのは2年前の冬のこと。配達員用アプリの配達商品確認画面を見てみると、登録は男性で「ビッグマックセット」「ポテトL」「コーラL」「ダブルチーズバーガー」「チキンマックナゲット15ピース」「三角チョコパイ」と表示されています。

男の人がチョコパイを頼むなんて珍しいな、と思ってインターホンを押すと、商品の受け取りに出てきたのは細身の女性だったのです。しかも視線を下ろしてみると玄関は女性ものの靴しかありませんし、奥からもれ聞こえてくるのはテレビの音声のみ。大食い番組でもスタイルがいいのに、ものすごい大食いの女性がいるのは知っていましたが、少し驚いてしまいました。

▲大量のジャンクフードをお届け イメージ:PIXTA

当時はウーバーイーツが現在ほど普及しておらず、私もこういった状況に慣れていなかったため、思わず女性の顔をまじまじと見入ってしまいましたが、今ではそんな失礼なことはしません。ササっと無反応に手渡すように心がけています。

スマホやパソコンから料理が注文できるウーバーイーツは、どんな料理を頼もうが、どれだけの量を頼もうが、商品を届けに来る配達員にしか顔を見られることがありません。

しかも同じ配達員が届けに来ることは滅多にない、ときています。そう、人目が気になり、外ではコッテリ系やガッツリ系のものが食べられない、という女性にはピッタリのシステムなのです。そこで今回は、配達員だけが垣間見れる、男メシを頼む女性たちのエピソードを紹介しようと思います。

1年半前、新宿区の某デリバリーピザチェーンで商品を受け取った時のこと。私は「お店の配達を利用した方が便利なのに……」と思いながら、ピザのLサイズをリュックに入れて指定された住所へ向かいました。

到着したのは一人暮らしの学生が多く住む、大学近くのワンルームマンション。学生がパーティーでもやるのかと思いつつ、マンションの入り口でインターホンを押すと、インターホン越しに聞こえてきそうな、にぎやかな声が聞こえてきません。エレベーターに乗って部屋の前に行き、呼び鈴を押して出てきたのは透き通るような声が美しい女性の方でした。

時刻は平日の21時過ぎ。この時間にウーバーイーツを利用する女性はメイクを落としている可能性が高いので、失礼のないよう目線を下に向けていると、玄関には靴が1足しか並んでいません。開始時間の遅いパーティーなのかなと思い、少しだけ目線を上に向けて口元を見ても……メイクをしていない! どうやら1人でお召しあがりのようだ。

おそらくピザ店のデリバリーだと、同じバイトの人が来てしまう可能性があるので、ウーバーイーツを利用しているのでしょう。それにしても21時からLサイズのピザとは……。翌日の胃もたれが気になって、脂身たっぷりのロースカツが食べられなくなった中年男にとっては、その若さがうらやましい限りです。