アメリカ全土では日本の36倍となる陽性者数

ミネソタ州はコロナが始まって以来、陽性者数は低めで安定していたのだが、寒くなってきた10月末から記録を更新中で、今やアメリカ全土で日々平均トップ3の陽性者数にまでになってしまった。

そんなミネソタ州の過去2週間(11月時点)の陽性者数と、日本の陽性者数を比較すると、日本全国で14.6ケース/1万人に対し、我が州では1250ケース/1万人となり、なんと85倍の陽性者数となる。

日本全国とアメリカ全土を比較すると、アメリカ全土では日本の36倍となる。日本国民がいかに意識高く努力しているかが感じられる。

公共施設や商業施設、学校などではコロナ対策が義務付けられ、ソーシャルディスタンスやマスク着用を義務付けし、店内での人数管理を行うなどかなりの対策実施徹底の努力が見て取れる。しかし、個人レベルになると対策を守る人と守らない人に分かれ、残念ながらグッとレベルが下がってしまう。

対策を守っている人は、マスク着用・手洗い・ソーシャルディスタンスを守っている。

社交的で自宅に来客が多かったご近所の奥さんも、家に友人を呼ぶことはなくなり、呼ぶとしてもかなり親しい人で少人数に留めている。お茶に呼ぶのも声をかけるのも、コロナ下での相手の考え方を探りながらなので、声をかけるのが難しいと話していて、日本人もアメリカ人も同じように感じているようだ。

このように人付き合いも制限して、慣れないマスクをつけて外出し、旅行や外食も制限されると、真面目にやっている人ほどストレスは高く、コロナ対策をしていない人への憤りが高まっている。

また、暖かい時期には屋外で子どもの誕生パーティーを開いているのを目にしたが、せっかく屋外でやっていても挨拶でハグしたり、ほっぺにキスしたりしているのを見ると、習慣を変えるのは難しいのだと感じる。

こんなこともあった。娘のクラスメイトの母親が、勤め先でコロナ陽性者が出たために、家族全員が自粛に入ったという。あとから聞くとその母親も感染していたようだ。しかし、その母親は自分の体調がよくなった途端、どうせ自粛で仕事に行けないのだからと、他州の親戚の家に家族連れで訪問したという。

似たような例で、9月に両親が陽性になり、11月には子供が陽性になるなど、家族で複数回も陽性者を出す家族もあった。話を聞くにつけ、どこに行って感染しているのか? 家族で対策を徹底してないのか? 用心していないのか? と不思議で仕方がない。

ましてや、それが子どものクラスメイトだったりしたのでたまらない。そうした軽率な行動をとる家族がいるために、クラスメイト全員がその都度連絡を受けPCR検査に向かい、結果が出るまで心配で気を揉む生活を送らされることになるのだ。腹立たしくもなる。

▲COVID19検査施設。入口の看板には、到着後は車内で待機するよう書かれている

生活スタイルが変わりつつあることを実感

コロナが始まり国民のストレスが溜まっているところへBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動が始まった。これにより分断が顕在化し、民主党対共和党の図式に結びつけられた。

つまり、陽性者数を低くコントロールできないのは、コロナに対してほとんど対策を取りたがらないトランプの悪政だと、生活に規制が多いことにストレスをためていた国民は考え始めたのである。大統領選も控えていたことから議論、分断はさらに進んでいった。

一方、意外な展開もある。失業者の増加が著しい経済状況で不動産市場はさぞかし苦戦しているのかと思いきや、リモートワークが進み、コロナをきっかけとして家での仕事部屋、フィットネスに充てる部屋などを備えた大きめの家に引っ越したり、人混みを避ける目的で郊外への引っ越しなどが増加し、コロナが始まった3~4月は不動産市場は賑わったようだ。

企業は今後もリモートワークが前提、もしくは通勤の頻度が減るなど、都心や駅近に住むメリットが失われてきている。通勤のために大きな街に住んでいた人は、ちょっと郊外の部屋数が多い家に住み替えする人が目立っている。

我が家のご近所さんも家を売りに出したのだが、3日で買い手が決まり、アメリカ人の決断の速さに舌を巻いた。私なんて洋服1枚買うのにも迷うのに……。

ワクチンが完成して接種が始まったとしても、筆者のような中年の基礎疾患のない人々への接種は一番後回しにされるだろう。全ての人々にワクチンが行き渡るのは、いつになるのだろう。ワクチンの効果は本当に90%超えなのか。その後の生活をコロナ前の状態に戻すことができるのか。まだまだこの先不透明である。

自分ではどうしようもない歴史の流れの中にいるということは、こういう不安を抱えるものなのかな、と平穏な時代しか知らなかった自分が恵まれていたことを知った気がする。


アブイゾフ えりこ
28歳のときに渡米。その後現地のロジスティック業界で貿易事務・オペレーターを勤め、米国で結婚し現在に至る。在米17年目。現在は夫と、13才と11才と6才の娘と愛犬のマルプーともにアメリカミネソタ州に暮らしており、在宅で翻訳や日本国内の英語学習者向けに、オンライン講座などを行っている。