アメリカ大統領の通信簿さまざま

世界でランキングをつけるのが一番好きなのはフランス人でしょう。ミシュランの星がその典型です。私もフランス留学で学んだテクニックで『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)とか『アメリカ歴代大統領の通信簿』(祥伝社黄金文庫)という著書を書いてきました。

私のランキングの基本的な視点は、

  1. 優先的に取り組むべき課題が何であるかを正しく把握したか
  2. その課題を解決するための方策を正しく立てたか
  3. それを実行する政治力を発揮したか

どうかということです。

▲アメリカ大統領の通信簿さまざま イメージ:PIXTA

私がつけた格付けは別表の通りです。ポーク大統領は派手ではありませんが、カリフォルニアの併合などアメリカの骨格をつくり、経済政策もたいへん優れたもので、与えられた使命を彼ほどよく果たした大統領はいません。

それに対して歴代大統領のランキングでしばしば勘違いしていると思うのは、大統領としての任期中の業績で評価すべきところを、人間としての魅力とか、人生を通じての仕事とかで評価していることです。

アメリカでの専門家へのアンケート調査の結果などを見ると、人物としての魅力とか能力が問われ、仕事の成果が軽視されていますし、何をしたかは問われても、失ったものは軽視されがちで、その結果、戦争をした大統領の点数が高くなったりしています。

また、黒人への配慮は重視されますが、先住民への暴虐は軽視されています。民主党支持者が回答者には多い印象で、日本との関係では共和党大統領のほうが良好なケースが多いだけに違和感があります。とくにトルーマン大統領の原爆投下は、プラス評価の材料になっているのが残念です。

一般大衆の評価はというと、いい調査がありません。歴史に詳しいアメリカ人などそういません。ただ、偉大な大統領として出てくる名前のなかに、ワシントンにジェファーソン、リンカーンや両ルーズベルトと並んで、共和党支持者ではレーガン、民主党指導者ではケネディが他を圧して人気が高いということが言えると思います。

また、夫人では、F・ルーズベルトのエレノア夫人がトップでリンカーン夫人が最低とされます。近年ではジョンソン、カーターの夫人が上位にあります。ブッシュ(父)夫人も好感度が高いと思いますし、いまのところ、ミシェル・オバマ夫人もそうですが、このあたりになると、もう少し時間が経たないと確定したものではないと思います。

▲5段階評価で5が最高 『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社:刊)より
①はアメリカ政治科学協会の2017年の専門家への調査
②はウォール・ストリート・ジャーナル2005年。思想による偏りを補正
③はアーサー・M・シュレジンジャー・シニアによる専門家アンケート(1962年)で古典的。いずれの場合も、元は順位などで示されていたものも正規分布に近い5段階評価に加工
④はシエナ研究機構による2016年ファーストレディーについての評価。配偶者でなく娘などであることもある

※本記事は、八幡和郎:著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社:刊)より一部を抜粋編集したものです。